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Column Feature Tweet Yoko Shimizu

小説や漫画の中に登場するクラシック音楽を紹介したいと思う。

YOKO SHIMIZU COLUMN


ラジオディレクター清水葉子コラム

清水葉子COLUMN
RADIO DIRECTOR 清水葉子

フリーランス・ラジオディレクター。TOKYO FMの早朝の音楽番組「SYMPHONIA」、衛星デジタル音楽放送ミュージック・バードでクラシック音楽の番組を多数担当。「ニューディスク・ナビ」「24bitで聴くクラシック」など。趣味は料理と芸術鑑賞。最近はまっているのは筋トレ。(週1回更新予定)

私は音楽評論家でもプロのライターでもないので、このコラムも「クラシック音楽について、専門的になり過ぎない内容で好きに書いて下さい」と言われたのをいいことに、今回は更に個人的趣味でクラシック音楽を紹介したいと思う。ずばり小説や漫画の中に登場する音楽だ。

小説ではなんといっても村上春樹。「1Q84」ではタクシーの車中でラジオからヤナーチェクのシンフォニエッタが流れるシーンが描かれている。ヤナーチェクの作品の中ではメジャーな作品だが、誰もが知っているとは言い難いこの曲がこれだけ世間に注目を浴びるとは思わなかった。しかし冒頭がファンファーレで旋律も和声もヤナーチェクらしくエキゾティックなので、初めて聴く人にも耳に残る楽曲だ。

icon-youtube-play ヤナーチェク / シンフォニエッタ

続く「色彩を持たない田崎つくると彼の巡礼の年」ではタイトルの通り、リストのピアノ曲集「巡礼の年」から『ル・マル・デュ・ペイ(郷愁)』。幼なじみが高校生の頃に弾いていた曲として回想される。リストといえば技巧的で派手なピアノ曲が有名だが、この曲も含め晩年の作品は非常に瞑想的で静かな作品が多いのが特徴だ。また最新刊「騎士団長殺し」ではモーツァルトの歌劇「ドン・ジョヴァンニ」が登場する。ファンタジックでユーモラスな音楽はストーリーを見事に彩っていた。村上春樹の小説はとても感覚的だから、登場する音楽を知っているか否か、でだいぶ印象が変わってくるに違いない。

icon-youtube-play リスト:《巡礼の年 第1年スイス》 S 160 8 郷愁 ル・マル・デュ・ペイ

最近では恩田陸の小説「蜜蜂と遠雷」も話題だ。ピアノコンクールを舞台とした若者たちの青春群像を描いたこの小説は、音楽の描写がとても細かく、リアルに表現されている。実際に音楽を聴くとよりいっそう登場人物の演奏イメージが膨らむ。私が担当するラジオ番組でもこの音楽を集めたディスクをご紹介した。

また漫画も音楽をモティーフにした作品は数多い。少し前には「のだめカンタービレ」が大ブームを起こして一躍クラシック音楽を聴く人口が増えた感があった。ベートーヴェンの交響曲第7番を『ベト7』と呼ぶのもメジャーになったし、ガーシュウィンの「ラプソディー・イン・ブルー」はもともと人気曲ではあるが、あの『のだめ』の曲、というリクエストが番組にも届くことが多くなった。

icon-youtube-play 【ベト7!】 ベートーヴェン 交響曲第7番・第一楽章 ヘルベルト・フォン・カラヤン ベルリン・フィル Beethoven

icon-youtube-play ガーシュイン ラプソディ・イン・ブルー 小澤征爾 マーカス・ロバーツ・トリオ

さそうあきらの「神童」や「マエストロ」も映画化されるなど人気を集め、楽曲を集めたCDが発売されている。

また少し昔の作品だが、竹宮恵子の描いた「変奏曲」という漫画があった。ピアニスト、ハンネス・ヴォルフガング・リヒターとヴァイオリニスト、エドアルト・ソルティの出会いと交流を描いた連作で、いわゆる少年愛ものだがクラシック音楽をモティーフにした印象深い作品だった。そこでは優等生キャラのヴォルフガングのデビュー曲はベートーヴェンのピアノ協奏曲「皇帝」、そしてスペイン貴族の血をひく、激しい気性のエドアルトが演奏するラロの「スペイン交響曲」も登場人物のキャラクターと一致していて面白かった。

icon-youtube-play ベートーベン・ピアノ協奏曲第5番「皇帝」

icon-youtube-play ラロ 「スペイン交響曲」 作品21 グリュミオー/ロザンタール Lalo Symphonie espagnole

先日、漫画「ガラスの仮面」展を観に行った。連載40周年を迎え、いまだに完結していないという少女漫画界の金字塔。小学生の頃に読み始めた私にとってはもっとも長い期間親しんでいる漫画である。演劇界幻の名作「紅天女」を目指す少女、北島マヤの女優としての成功への道のりを描いた演劇ドラマで、ライバルの姫川亜弓、師である往年の大女優の月影千草、『紫のバラの人』としてマヤに想いを寄せる速水真澄など個性溢れるキャラクターたち、マヤが演じる作中劇のストーリーの面白さも魅力だ。会場にはプロコフィエフの「ロメオとジュリエット」が流れていたが、これはもちろん、ライバル姫川亜弓が演じた独り芝居「ジュリエット」に基づくものだ。そう考えると「ガラスの仮面」にもクラシック音楽がいくつか登場しているのだ。

icon-youtube-play ♪NHK音楽祭2007 プロコフィエフ:バレエ組曲「ロミオとジュリエット」 / ワレリー・ゲルギエフ指揮マリインスキー歌劇場管弦楽団 2007.11.18

物語始めはマヤの芝居への熱い情熱を物語るエピソードとして登場する「椿姫」の舞台。これはもちろんヴェルディの歌劇「椿姫」が想起されるし、才能を見込まれ、劇団つきかげに入り「若草物語」の四姉妹の一人ベス役に抜擢され、舞台の病床で本物の熱にうなされながら歌うのはシューベルトの「野ばら」。演劇コンクールで敗れ、離散同然になった劇団のメンバーと稽古する場面では「ハムレット」のオフィーリア。これはチャイコフスキーの幻想序曲「ハムレット」。また演劇生命を絶たれそうになったマヤが再び立ち直り、取り組む野外舞台では「真夏の夜の夢」の妖精パック。メンデルスゾーンの劇音楽が有名だ。といった具合に演劇ドラマゆえシェイクスピアの戯曲が多いためか、いくつも思い当たる曲があった。何しろクラシック音楽にはシェイクスピアに触発された作品が数多くあるからだ。
ストーリーの中に登場するクラシック音楽を本と一緒に楽しむことで、よりその世界観を深く理解できる。自分で音楽を集めるのもよし、CDを買うのもよし、そして何よりラジオ番組でそうした特集を楽しむのも是非おすすめしたい。

icon-youtube-play ヴェルディ:歌劇 《椿姫》 第1幕前奏曲

icon-youtube-play Schubert: Heidenröslein (Goethe) シューベルト: 野ばら(ゲーテ)

icon-youtube-play **♪チャイコフスキー:幻想序曲「ハムレット」 Op. 67 / イーゴル・マルケヴィッチ指揮ニュー・フィルハーモニア管弦楽団 1967年6月

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