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Column Feature Tweet Yoko Shimizu

体育会系目線のニューイヤーコンサート

YOKO SHIMIZU COLUMN


ラジオディレクター清水葉子コラム

清水葉子COLUMN
RADIO DIRECTOR 清水葉子

フリーランス・ラジオディレクター。TOKYO FMの早朝の音楽番組「SYMPHONIA」、衛星デジタル音楽放送ミュージック・バードでクラシック音楽の番組を多数担当。「ニューディスク・ナビ」「24bitで聴くクラシック」など。趣味は料理と芸術鑑賞。最近はまっているのは筋トレ。(週1回更新予定)

突然だが私は何年か前からジムで定期的にトレーニングをしている。もともと体が硬く、ラジオの仕事を始めてからは編集作業や原稿書きなどでずっとパソコンに向かっていることも多いので、肩凝りや腰痛になりやすく、これが慢性化してしまい、体を動かす必要性をずっと感じていたのだ。

しかしスポーツが得意とは言い難いタイプなので、何か体を動かすもの、と思いついたのが、始めはバレエだった。究極的にはバレリーナのような均整のとれたスタイルになれたら素晴らしいなぁ、と無謀な考えのもとに大人バレエを始めたのは今から10年以上前のこと。それなりに楽しく仲間もでき、体も個人的には少し柔軟性が出てきたのだが、「バレエを踊る」ということになるとそんなレベルでは当然追いつけず、体幹も備わっていないのに回転をしても目が回るばかり。それ以外の振りももはや盆踊りとなってしまうのである。

icon-youtube-play バレエ「くるみ割り人形」より『花のワルツ』

なんとなくバレエに限界が見え始めたところで、また仕事がハードになってきて、肩凝りと腰痛がピークに達していた。また不規則で体も動かさない生活が長く続くと、比較的太らない体質だと思っていた私もさすがに体重が増加しつつあった。そればかりか締まらない体つきがかなり自分でも気になってきていた。そこで知り合いに紹介されたのがパーソナルトレーナーのK先生だった。

当然ダイエットも視野に入れてK先生の個人ジムがある恵比寿まで赴いた。初対面のK先生はとても今時の青年。体つきは思ったより細かったが、無駄のない筋肉質の体型でいかにもスポーツマン、といった感じだ。髪が金髪だし、下手をするとちょっとホストのような雰囲気もある。なんとなく苦手なタイプかも……と尻込みしていた私に開口一番「姿勢が悪いですね。そういう歩き方を続けていると使える筋肉が限られてしまうから、どんどんお尻がたるんできます」。初対面の男性にこれだけはっきりとダメ出しされたのは初めてである。屈辱。

そして日常生活における食事の内容やこれまでの運動の経緯、どういうスタイルになりたいか、などの質問が続いた。食事についての指導もされた。全体的に糖質が多いこと、たんぱく質を多く摂取してできるだけ夜は炭水化物の量を減らすこと、など。基本的なことだが、その解説は理にかなっていて説得力があった。その日も軽くストレッチをやってもらい、少しマシンを使ったトレーニングをしたが、動きとしてはそんなにハードでもなく、これくらいなら私でも難なくできるメニューばかりだった。とりあえずK先生に言われたことを実践してみて、様子を見てから通い続けるか考えようと思っていた。

しかし2週間に1度のジム通い3回目を経たあたりから、目に見えて体重が減り始めた。体脂肪率も下がり、体重はあっという間に目標値になってしまった。さすがカリスマトレーナーというだけはある。ホストみたい、なんて思っていた私もK先生を信頼するようになり、早2年が経つ。

そのK先生、私がクラシック音楽関係の仕事をしているのを知ってか、先日「新年のウィーン・フィルのニューイヤーコンサートを指揮者によって聴き比べてみたんですよ」と言う。普段ジムではヒップホップとか今時の音楽が流れているのだが、いきなりウィンナ・ワルツである。最後のヨハン・シュトラウスの「ラデツキー行進曲」は毎回演奏される曲なので、それで聴き比べたらしいが、普段は全然クラシック音楽を聴かないというK先生が気に入った指揮者はイタリア人のリッカルド・ムーティだった。曰く、「一番オーケストラを自由に動かしている」感じがするのだそうだ。なかなかいいところを突いているではないか。

icon-youtube-play ニューイヤーコンサートbyムーティ指揮ウィーン・フィル

カラヤンの指揮は「俺の言う通りに動け」と言わんばかりでサッカーで言うと選手が自主的にプレーしにくい〇〇監督(名前を忘れた)、のように感じたとか。さすが元サッカー少年の意見である。

icon-youtube-play ニューイヤーコンサートbyカラヤン指揮ウィーン・フィル

また彼の最近お気に入りの楽器はチェロで、「ヴァイオリンなどより全身を使って演奏するので筋肉の動かし方、それによってどんな音が出るのか興味がある」のだそうだ。「チェロの音色も低くて心地良いので、自分でも習ってみたいんです。まぁ、その時間がなかなかないですけど」とも言っていた。バッハの無伴奏チェロ組曲が好きだと言っていたので、パブロ・カザルスの演奏をおすすめしておいた。

icon-youtube-play バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番byカザルス(Vc)

普段の仕事場では音楽評論家の先生やライターの方、演奏家など、いわゆる専門畑の人と話す機会が多いので勉強になることはたくさんあるが、やはり想定内の話題になりやすい。しかしこういった業界以外の人とクラシック音楽の話をするのはとても新鮮だった。こうやってまだクラシック音楽の素晴らしさに気が付いていない人が興味を持ってくれるきっかけが増えるといいなぁ、と思いつつ新年のニューイヤー・コンサートを聴いてサッカーと重ね合わせて楽しむK先生の様子を今から想像して楽しくなってしまうのである。

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