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Column Feature Tweet Yoko Shimizu

平成音楽史

YOKO SHIMIZU COLUMN


ラジオディレクター清水葉子コラム

清水葉子COLUMN
RADIO DIRECTOR 清水葉子

音大卒業後、楽器店勤務を経てラジオ制作会社へ。その後フリーランス。TOKYO FMで9年間早朝のクラシック音楽番組「SYMPHONIA」を制作。衛星デジタル音楽放送ミュージックバードではディレクター兼プロデューサーとして番組の企画制作を担当。自他ともに認めるファッションフリーク(週1回更新予定)

いよいよ「令和」の元号が発表され、世の中では「平成」を振り返る、という趣旨の企画がたくさんあるようだ。平成の30年は今上天皇が存命のうちに終わりを迎える、という今までにない穏和な形でもあるし、そうした企画を作る側の世代が青春時代を過ごした時期、ということも多分にあるだろう。激動の昭和を振り返った時よりは和やかな雰囲気で盛り上がりをみせている。

音楽の世界ではどうだろうか。ちょうど平成元年にあの、ヘルベルト・フォン・カラヤンが亡くなったというのは象徴的だ。またベルリンの壁が崩壊し、東西の冷戦も終わった。崩壊した壁の前でチェリストのムスティスラフ・ロストロポーヴィチが演奏した様子は当時学生だった私もよく覚えている。その後は旧東ドイツの音楽家も活動の場を広げるようになった。

icon-youtube-play ベルリンの壁の前で演奏するロストロポーヴィチ

翌平成2年にはレナード・バーンスタインが亡くなる。二人の偉大な指揮者が亡くなったことでクラシック音楽界は巨匠時代の終焉を迎える。しかしそうした中で特に日本ではレコード文化が活発な時代でもあった。3大テノールの人気なども少し後に続くが、高額なチケットが飛ぶように売れていたのが驚きである。そしてタワーレコードやHMVなど大手外資系レコードショップがオープンし、巨匠たちのアーカイヴ音源も続々と発売された。「アダージョ・カラヤン」の大ヒットも記憶に残るところだ。

icon-youtube-play 3大テノール(ドミンゴ、カレーラス、パヴァロッティ)

しかし平成はバブルが弾けた後の日本ではどこか不穏な空気が蔓延していた時代でもあった。阪神淡路大震災という災害と、地下鉄サリン事件という国を揺るがすようなテロ事件が起こったのは平成7年のことである。税収不足から平成9年には消費税が5%に上り、「新世紀エヴァンゲリオン」の大ヒットで〈おたく文化〉が一気に世間に認知され始めた。

icon-youtube-play 「新世紀エヴァンゲリオン」

振り返ると意外な気もするがE-Mailが開始されるのは更に2年後の平成11年なのである。とするとこのあたりでようやく携帯電話が一般の人たちに普及してくる頃なのだ。この頃ラジオの仕事を始めた私自身の記憶で印象的なのは西暦2000年問題。放送のデータを組む端末やシステムがどうなるかわからない、という中で、当時はまだデスクワークが主だった私も慣れない仕事を必死にやっていた記憶がある。

そして平成13年、2001年にはあの米国同時多発テロ事件が起きる。高層ビルに飛行機が突っ込んでいく映像はまるで映画のシーンのようで、にわかには信じられなかった。しかしTV画面のそれは紛れもない現実だった。世界が国や人種、宗教など様々な問題を抱えた中で起きたこの事件。その後アメリカはこの国家最大のテロ事件をトラウマにして暗い時代に突入していく。

私個人的にはこの頃クラシック音楽の番組制作の仕事を本格的に始めたものの、様々な事情からフリーランスになって心細い気持ちになっていた。平成21年には裁判員制度が始まり司法制度への注目も高まったが、それより以前からあったのが検察審査会だ。私はそんな時期にこの検察審査会に選出されて、一時期裁判所に通ったことがあった。そのことについては以前このコラムでも少し書いたのだが、裁判所での体験はとても貴重なものだった。個別の事件についてはここで書くことはできないが、任期は半年間だったので私は関わらなかったのだが、次の任期の人たちにはあの東京電力の原発事故についての事件が控えていた。

そう、平成23年にはあの東日本大震災が起こった。予定されていたアーティストがその原発の影響から来日拒否、公演自体もキャンセルになるなど音楽界にもかなりの影響があった。その一方でチャリティーコンサートのためにいち早く来日したアーティストたちもいた。音楽の力がそのまま生きる希望を与えてくれたことは、未曾有の災害を経験した私たち日本人にとって忘れることはできない。

続いて日本では佐村河内守のゴーストライター事件が起こり、ワイドショーをも騒がせ、皮肉にもクラシック音楽が注目される。一方世界では新たな古楽ブーム、小編成のオーケストラ運動など、ヨーロッパを中心に様々な潮流が生まれた。

icon-youtube-play 新垣隆:交響曲「連祷」ーLitanyー

さて、クラシック音楽の世界からこの平成30年を俯瞰した番組をミュージックバードで放送している。これは「平成音楽史」という2018年8月に放送された番組で、これをもとにアルテスパブリッシングから本が発売。番組でもお馴染みの音楽評論家、片山杜秀さんと山崎浩太郎さんのお二人と、そこにパーソナリティの田中美登里さんが聞き手として登場し、平成の音楽談義を更に鋭い角度からまとめている。片山・山崎両氏のコンビによる毎年年末に放送する名物番組「年末クラシック放談2011〜2018」もミュージックバードではただいま期間限定で絶賛再放送中である。

また新番組「山野楽器クラシックベスト10」も4月からスタートしているが、山野楽器では〈平成音楽30年史〉と銘打ってその年々のヒット音楽を網羅する特集を店頭で行なっている。その一部を番組でも紹介しているので、こちらもお楽しみに。私の在籍時代にはグレツキの「悲歌のシンフォニー」が大ヒットしていた。今や懐かしい。

icon-youtube-play グレツキ:交響曲第3番「悲歌のシンフォニー」

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