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Column Feature Tweet Yoko Shimizu

ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2019

YOKO SHIMIZU COLUMN


ラジオディレクター清水葉子コラム

清水葉子COLUMN
RADIO DIRECTOR 清水葉子

音大卒業後、楽器店勤務を経てラジオ制作会社へ。その後フリーランス。TOKYO FMで9年間早朝のクラシック音楽番組「SYMPHONIA」を制作。衛星デジタル音楽放送ミュージックバードではディレクター兼プロデューサーとして番組の企画制作を担当。自他ともに認めるファッションフリーク(週1回更新予定)

ゴールデンウィークの風物詩と言えばラ・フォル・ジュルネである。今年は10連休ということで世間は大騒ぎだったが、私の担当番組はほとんど通常通りに収録をすることになっていたので、合間に合間に仕事をこなしながら、席が残っている公演の中からめぼしいものをピックアップして計4公演に出かけることにした。

まずは3日の夜の公演。スキップ・センペのチェンバロによるカルト・ブランシュ。プログラムは公演が終わるまでわからない。しかし春の夜に聴くチェンバロの響き、というのはなんとも魅力的ではないか。その日の19時からレギュラー収録があったので、終わってから駆け足で22時開始のこのコンサートに行くつもりだったが、少し早めに収録が終わったので余裕を持って会場である東京国際フォーラムに着くことができた。さすがに一聴して何の曲かというのは分からなかったが、フランスのバロックだな、というのはわかった。ダングルベール、シャンボニエール、ルイ・クープラン……テーマは「フランソワ・クープランが聴いた音楽」というものだった。なるほど。敢えてフランソワを外すというプログラムが憎い。同時に仕事続きで心身ともに疲れが溜まっていた私にひとときの安らぎを与えてくれた。

icon-youtube-play スキップ・センペ(Cemb)

翌日は午前9時45分からのコンサートを聴くことになっていた。朝から日差しが眩しい5月らしい陽気だ。その日は午後と2公演聴く予定で、合間にスタジオに寄り、仕事をするつもりでもあったので、歩きやすいスニーカーで動き回ることにした。こんな気軽な感じでコンサートを聴けるのもこの音楽祭のいいところである。さて、最初は2台8手というピアニスト4人による豪華競演。プログラムも珍しい曲が含まれていたので興味津々だった。ちょっと予想外だったのは小さい子どももOKな公演だったのだ。ちょうど私の目の前には小さな男の子がいて、始まる前から落ち着きがなかったのだが、しばらくすると完全に飽きてしまったらしく後ろを向いてしまい、つまりは私と顔を見合わせるような状態の姿勢だったのである。彼はしばらく「構って」光線を放っていたのだが、ここで目を合わせてしまってはお終いである。私は必死にステージを凝視していた。そんなこともあって実を言うとあまり演奏に集中できなかったのだが、始めの2曲は2台8手のための作品としては音域が重なり過ぎて少々うるさい感じだったが、最後のサン=サーンスの「アルジェリア組曲」はさすがに鍵盤楽器を知り尽くした作曲者自身の2台ピアノ版であるし、何よりフランク・ブラレイがトップを弾いたことで音楽が立体的になり、聴き応えがあった。

icon-youtube-play サン=サーンス:アルジェリア組曲(2台ピアノ版)

さて終演後、有楽町線に乗り、半蔵門に移動して前日に収録した番組の編集作業。16時前に無事納品終了し、再び有楽町へ。今度はジャン=クロード・ぺヌティエのピアノが目当てでフォーレの協奏的作品「ピアノと管弦楽のためのバラード」。珍しい作品でもあり、フォーレの持つ独特の色彩感をぺヌティエのピアノが美しく描き出す。しかし本人は不満だったのか、演奏が終わると微妙なジェスチャーをしつつ袖に去ってしまった。後半のドビュッシー「ピアノと管弦楽のための幻想曲」はジョナス・ヴィトーのソロで、こちらも華やかだったが、アンコールはヴィトーのみ。ぺヌティエはさっさと帰ってしまったのだろうか? この日は再び半蔵門に戻って書類を作成してから帰宅。

icon-youtube-play ジャン=クロード・ぺヌティエ(P)

翌日はようやく私も少しのんびりと起床。最終日は17時から合唱のコンサート。〈ミクロコスモス〉というグループの注目度の高い公演ではあったのだが、ホールB7という音響的にはあまり期待できないホールでもあり、一昨年だったかやはりここで合唱を聴いてがっかりした記憶が甦ってきた。正直他の公演にした方がよかったかも、と考えていると、藤倉大の作曲だという始まりのベル。これがオープニングの曲の導入として音楽的にも見事な流れを作った。そして合唱団のメンバーが後方から登場。客席の間を歌いながら進む。するとこのホールのデッドな響きが幾分和らぎ、しかも左右に動きながら歌うのでバイノーラル効果まで出る。途中メレディス・モンクの曲を挟み、パフォーマンスにも目を奪われる。同時に照明も色を使ったり、暗くしたり、客席全体を舞台として演出されたそのステージにどんどん惹き込まれていった。女性たちは髪を編み込み、民俗的な刺繍の入った衣装も北欧かロシアのようなムードで素敵だった。何よりもそのプログラムが秀逸。タルボット、プーランク、トルミスなど、一見とりとめのない作曲家の作品を彼らの作り上げる世界の中で神秘的なハーモニーをもって調和させる。

icon-youtube-play ミクロコスモス(Cho)

後半聴き覚えのあるメロディーが歌われ、「何の曲だったかな」とプログラムを確かめるとグリーグの抒情小曲集から『昔々』だった。最後は男女のペアが並んで退場して婚礼の様子を窺わせ、歌われたのはノルウェーの作曲家、ソンメローの『結婚行進曲』。素晴らしく見事な演出に大満足のラ・フォル・ジュルネ最終日だった。

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