音楽性・ファッションの”亜流”を極めし歌姫、Kali Uchis/カリ・ウチス魅力を語る
次世代の海外アーティストをフィーチャーする連載。今回は、コロンビア出身の女性シンガーソングライター、Kali Uchis(カリ・ウチス)の略歴を紹介するとともに、その魅力に迫ろうと思う。
一見するとLady GaGaやChristina Aguileraの路線をいくポップス歌手のような出で立ちだが、Kali Uchisを知れば知る程、そのクセの強さに惹かれる人は多いだろう。
60〜70年代のファッションや音楽を現代に昇華させる圧倒的センス
Kali Uchis、本名Karly Loaiza(カーリー・ロアイザ)は1993年にコロンビアで生を受け、幼少期にアメリカのバージニア州アレクサンドリア(ワシントンD.C.の南に位置する街)に両親とともに移住する。
子どもの頃からピアノとサックスを学び、レコーディングもするなど豊かな音楽環境の中で育ち、2012年に自主制作アルバム「Drunken Babble」でデビューする。このアルバムで注目を浴びると同時に本格的な音楽活動を開始し、2014年にはSnoop DoggやGoldLinkなど今をときめく有名アーティストの楽曲に参加したり、自身の曲を数曲リリースしていずれもネット上で反響を得るなど、着実に実力と知名度を得ていく。
そして、2015年には2枚目のアルバムとなる「Por Vida」を公式サイト上で無料リリースする。無料とはいっても、DiploやTyler, The Creatorなど有名プロデューサーを起用した曲を収録した意欲作であり、本作でKali Uchisはさらなる人気を獲得することなる。
同年にはVirgin EMIより初のメジャーシングル「Ridin Round」をリリースし、ソロ歌手としての新たな一歩を踏み出す。翌年2016年には「Only Girl」をリリースし、YouTubeでは数百万再生回数を獲得するヒットとなっている。
ファッションや音楽性など、主流とはいえないスタイルを貫き、新星ながら既に唯一無二の存在感を音楽シーンに放っているKali Uchis。Lady GaGaやNicki Minajなどのポップカルチャーの中の異端児とは違うスパイスを味わえるシンガーだと感じる。
代表曲「Know What I Want」とともに見るKali Uchisの世界観
Kali Uchisの唯一無二の音楽性やファッションを代表曲「Know What I Want」に見ることができる。
60年、70年代のアメリカを彷彿とさせるファッションに身を包んだKali Uchis。オールディーズのファッションを現代カリフォルニアのセンスに昇華するのがKali Uchisのスタイルなようだ。
曲調についても、70年代に多用された電子オルガンの音色が何とも小粋である。ドラムスやコーラスなどはレゲエやジャズの要素を取り入れ現代風に仕上がっており、独特ながらお洒落で耳障りの良い曲に仕上がっている。
D♯マイナー調、「D♯m-C♯」の2つのコードのみで終始進行していくものの、ベースやオルガンのアレンジで聞くものを飽きさせない構成だ。
「Know What I Want / 私の欲しいものを知っている」は、全体的に抽象的で解釈の幅のある歌詞のように思える。おそらくは彼女のことを気にかけない彼氏(または想い人)にうんざりしながらも離れられない乙女心を歌っているように思えるが、Kali Uchisのハスキーな歌声と相まり、大人の恋愛を語った粋な曲に聞こえる(もっともミュージックビデオは何やら物騒だが)。
同じくKali Uchisの人気曲であるメジャーデビュー曲「Ridin Round」も、電子オルガンの古典さとパーカッションほかの現代っぽさが絶妙に融合してお洒落な一曲である。
冒頭にはスペイン語の挿話があり、コロンビアというルーツも活かしたスタイルを出している印象だ。
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コロンビア出身の女性シンガーといえばShakiraを真っ先に思い浮かばれるが、ド主流のポップスターである彼女に対し、Kali Uchisは独特の味わいをもつ唯一無二のアーティストといえるだろう。Kali Uchisがどのように音楽性を深化させ、魅せてくれるのか楽しみである。