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BATTLES JAPAN TOUR 2019 LIVE REPORT

BATTLES


BATTLES JAPAN TOUR 2019 LIVE REPORT
(Photo by 横山マサト)

(情報提供: BEATINK)

イアン・ウィリアムスとジョン・ステニアーのデュオ編成となった新生バトルスが、10月に最新アルバム『Juice B Crypts』をリリースし、早くも来日ツアーを実現させた。東名阪の3公演すべて、平沢進+会人がサポート・アクトを務め、チケットは早々にソールドアウト。初日の東京公演会場となった恵比寿ガーデンホールでも、当然のようにオーディエンスがフロアにひしめく大盛況ぶりだ。

今年のフジロックにも出演して話題を集めた平沢進+会人は、短い演奏時間ながら、その存在感を強烈に示す。バトルスとの組み合わせは、意外性もありつつ、トンがった音に敏感なリスナーの関心を大いにそそる絶妙な対バンだったことは、この日の観客が見せた熱い反応からも十分に伝わってきた。実際、ギターやドラムなどの肉体的なツールとしての楽器を用いながら、エレクトロニック・サウンドを自在にコントロールする表現スタイルは、両者が持つ背景の違いを超えて不思議な共通性も感じさせる。

BATTLES JAPAN TOUR 2019 LIVE REPORT
(Photo by 横山マサト)

セットチェンジが完了すると、ステージ上にあるのは、向かってに右にイアンのキーボード、左にジョンのドラムキットと、シンプルな印象を与える機材。ジョンのドラムは、複数のシーケンスパターンを鳴らすトリガーとなるパッドが組み込まれ、もちろん、例によってシンバルは高い位置に掲げられている。
「Fort Greene Park」からスタートし、最新アルバムの収録曲を中心にしたセットリストでショウは進んでいく。スタートしてすぐに、たとえメンバーが減っても、彼らのライヴはパワーダウンしたりせず、むしろ軸となる力強いドラミングが、いっそう存在感を増していると確認できた。バシバシズドンと轟くキックとスネア、鋭いハイハットワークで生み出される唯一無二のグルーヴは、スタジオ作品以上に伝わってくる。それに乗って展開する多彩なエレクトロニック・サウンドについても、安易にコンピューターで鳴らされているような感触はない。細かい仕組みはわからないが、その場にはいないセニア・ルビーノスやシャバズ・パラセズの声も自然に聞こえるのは、もともと声を楽器のように扱う術に長けているからだろうか。
また、ホール全体が暗幕で覆われ、ジョンとイアンそれぞれを取り囲むように四角く置かれた、様々な色彩を発する可動式の照明も、さほど複雑そうではない構造ながら、非常に効果的な演出装置となっていた。

BATTLES JAPAN TOUR 2019 LIVE REPORT
(Photo by 横山マサト)

イエスのシンガーとして名高いジョン・アンダーソンの歌声をフィーチャーした「Sugar Foot」がプレイされた後、ビールをグイグイやってゴキゲンな調子のイアンは、昔の曲もちょっとやるよと話し、「Ice Cream」や「Atlas」も披露された。特に大ヒットした後者では、“ドンタドンタ”と例のビートが鳴りはじめるや、大きな歓声が沸き起こる。前方はギュウギュウした感じのフロアにも大きなうねりが発生している様子は壮観だった。
かなり先鋭的な音楽なのに、ジョンのドラムがある限りバトルスのサウンドは、とりわけライヴの場で優れたダンス・ミュージックとして機能し、日本のオーディエンスは世界でも特に上手くそいつを楽しんでいるのではないかと思えてくる(そういえば、子供連れで来ている人の姿もチラホラと見かけた)。
「Atlas」演奏後、再びイアンがMCで「2004年に初めて日本でライヴをやって以来、ここでライヴをすることがバトルスの歴史において重要なパートを担ってきた」といった内容の話をしていたのも、この国のリスナーと彼らの特別な関係性を意識しているからに違いない。
ラストは、新作の冒頭を飾る「Ambulance」で、シーケンス・パターンと絶妙に絡み合うタイトかつワイルドなドラミングがトドメの大爆発。終演後もその余韻はたっぷり後を引き、煌々と客電がつけられても、アンコールを求める拍手喝采はしばらく鳴り止むことはなかった。

BATTLES JAPAN TOUR 2019 LIVE REPORT
(Photo by 横山マサト)

2人きりになってもバトルスは成立するーーというよりむしろ、人員の補充をしない体制で新たな創作に向き合う姿勢によって、さらに深い次元でポテンシャルを引き出してみせることにバトルスが成功した事実を、スタジオ作品だけでなく生演奏を通じて、あらためて証明してみせたパフォーマンスだった。

Text by 鈴木喜之

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