2001年にデビューしたフレンチ・エレクトロの鬼才、とも言われるセバスチャン・テリエのニューアルバム。フレンチ・エレクトロ、これまでのアルバムは生音感の方が前に出ていた印象も強いのだが、今作は彼にとって、最もエレクトロなアルバムなのでは無いだろうか?2008年のアルバム「Sexuality」でも、だいぶエレクトロ寄りの音になっていたが、それでもPhoenixのようなバンド感を保っていた。
とはいえ、2016年と2017年にリリースしたサウンドトラックを聞けば、ここまでの音の流れというのが感じられる。
今作の冒頭の「A Ballet」は、トラップを取り入れたような楽曲で、これまでのセバスチャン・テリエとは違う雰囲気を一気に広げてくれる。2曲目の「Stuck in a Summer Love」は、ストリングスとピアノのリフと、エフェクトのかかったヴォーカルで、少し憂鬱というか悩ましい感情が伝わってくる。
アルバムを通して、エレクトロ・サウンドがメインとなっているので、どこかソリッドな印象を受ける。ヴォーカルのエフェクトの影響もあるのかもしれない。また、「Venezia」や「Hazy Feelings」「Won」など、ダンスナンバーも、情熱的というよりはクールだ。
アルバムのテーマは「ありふれた日常」ということ。いつもの情景を、全く別の、非日常へと変貌させる、そんなメッセージが込められているんだとか。なるほど、だからこそどこか無機質な印象を受けるのかもしれない。
このアルバムをBGMに、歩き慣れた街を歩いてみたら、また違った風景に見えてくるかもしれない。
Domesticated / Sébastien Tellier
Rambling Records
http://www.rambling.ne.jp/catalog/domesticated/
(NO.16編集部)