ステレオ効果をうまく使った曲特集
左右2つのスピーカーで音声を再生する「ステレオ」。
この効果を上手に利用している楽曲を特集。
クイーン
The Fairly Feller’s Master Stroke Queen
昨年公開された映画『ボヘミアン・ラプソディ』も大ヒットしているクイーンだが、
楽曲でも様々なチャレンジがされているのが、色々な楽曲を聞けばわかるだろう。
その中でも、ステレオ効果をうまく使っているのが、1974年にリリースされたアルバム『QUEEN Ⅱ』に収録された、「The Fairly Feller’s Stroke」だ。邦題は、「フェアリー・フェラーの神業」。
これは、当時、ロンドンのテート・ギャラリーに展示されていた、リチャード・ダッドの絵「The Fairly Feller’s Master Stroke」を見て、インスパイアされた曲ということ。
楽曲の冒頭から、時計の針の音が右から左へと流れていき、楽器も見事に左右で別れており、まさに左と右でコール&レスポンスをしているかのようなアレンジになっている。
ダーティー・プロジェクターズ
When The World Comes To An End Dirty Projectors
アメリカのバンド、ダーティー・プロジェクターズは、イェール大学で音楽を学んだ、
デイヴ・ロングストレスのソロ・プロジェクトとして2002年にそのキャリアをスタートさせた。多くのメンバーが出入りする、不定形なバンドとして活動している。
そんなダーティー・プロジェクターズが2011年にリリースした『Mount Wittenberg Orca』は、アイスランドの歌姫、Bjorkとコラボレーションした一枚。
音数は少なく、シンプルな楽器編成ながら、コーラスワークで音楽の厚みが増している。
「When The World Comes To An End」は、イントロからコーラスが左右で呼応し合い、まさに声を楽器としてアレンジしている。ヘッドホンで聴くと、ステレオ感をしっかりと感じられる1曲だ。
Orbital
Petrol Orbital
音の定位(右・左・中央といった位置)について、基本的には同じ楽曲の中で、一つの音が左右に動くということはあまりない。実際に聞いてみると、少し気持ち悪い感じがするのだ。しかし、Orbitalの「Petrol」では、様々な音色が右と左を行ったり来たりしている。これもヘッドホンで聴くことで、より音の動きをしっかりと感じ取れるだろう。
Orbitalは、1990年代のイギリスのエレクトロ・ミュージックを牽引したユニットの一つで、1996年のアルバム『Insides』からのナンバーだ。
System F
Out of the Blue System F
System Fとは、オランダ出身のフェリー・コーステンの別名義で、トランスのムーブメントを作り上げた1人だ。2001年にリリースされたアルバム『Out Of The Blue』のタイトルトラックは、耳にしたことがあるという方も多いのではないだろうか。
先述のオービタルの「Petrol」と同じように、一つの音色を左右に振っているのだが、こちらはオービタルのような気持ち悪さは感じられず、どちらかというと楽曲のスケールを広げる効果の方が際立っているように感じる。左右の音の振り方が、曲のテンポに合っているからなのだろう。
レディオヘッド
Airbug Radiohead
音響系オルタナティブ・ロックバンドとして、常に実験的なアプローチを続けているレディオヘッド。初期の名作の一つにも数えられる『OK Computer』から、冒頭に収録されている「Airbug」をピックアップした。印象的なギターのイントロは少し左寄りで始まり、ステレオ感満載の出だしなのだが、この曲で一番注目してもらいたいのが、ドラムの音。
専門用語で言うところの逆相の状態に変化していくのだ。どう言う状態かと言うと、ヘッドホンで聞いてもらうと、ドラムの音が右でもなく左でもなく、正面でもない、広がった状態で聞こえてくるのが分かるだろうか。
また、ギターなどもしっかりと左右に振られているので、楽曲の後半に行くに従い、いろいろな音が重なりあって、右と左に別れて聞こえてくる。ステレオならではの楽しみ方ができる楽曲である。