<特集 – プロテストソング>
政治的メッセージが込められた歌「プロテスト・ソング」。日本ではしばしば、アーティストが政治的なメッセージを発信することが忌み嫌われるが、そもそもアーティストはメッセージを発信するもの。今回は時代を超えてメッセージを届けるプロテストソングを特集。
公民権運動
BLOWIN’ IN THE WIND BOB DYLAN
1963年、ディランのアルバム「The Freewheelin’ Bob Dylan」に収録された1曲。「どれだけ砲弾を飛ばし合わなければならないのか」「いくつの耳を持てば、他人の声を聞くことができるのか」「どれだけの人が死ねば、人がたくさん死んでいることに気づくのか」という、社会に対する強烈な疑問を投げかけている。
そして、「その答えは風に吹かれている」と締め括られる。実際に、アメリカの「公民権運動」について討論をした中で生まれた楽曲だという。ボブ・ディランのオリジナルがそもそも有名だった、というよりは、フォークグループのピーター・ポール&マリーがカバーして、世界中に知られるようになったそうだ。
アパルトヘイト
NELSON MANDELA THE SPECIALS
イギリスの2トーン・スカバンド、ザ・スペシャルズが1984年に発表したののが、「ネルソン・マンデラ」というストレートなタイトルの楽曲。黒人として初めて大統領の地位についたネルソン・マンデラのことを歌った曲だ。人種隔離政策アパルトヘイトによって、黒人差別が当然のように行われていた南アフリカで、マンデラは若い頃から反アパルトヘイト運動に参加したが、1964年に国家反逆罪で死刑判決を受けて以来、獄中生活を余儀なくされた。スペシャルズのジェリー・ダマーズ自信がマンデラのことを知ったのは1983年だそうで、この曲がマンデラのことを知るきっかけになった、という人もいたことだろう。楽曲の中では「マンデラを解放せよ」とストレートに歌っている。
差別/権力
FIGHT THE POWER PUBLIC ENEMY
強烈なメッセージを届ける音楽の一つがラップだが、このパブリック・エネミーも、社会的・政治的メッセージを届けることで知られているグループだ。特に彼らの代表曲、「FIGHT THE POWER」は、スパイク・リーの映画「DO THE RIGHT THING」のために書き下ろされた楽曲で、この映画はブルックリンを舞台に、人種差別を描いた作品となっている。「権力と戦え!」と執拗に叫ぶこの曲は、2020年に新バージョンもリリースされた。新しいバージョンの中では、トランプ前アメリカ大統領に触れる歌詞も出てくる。
イラク戦争
AMERICAN IDIOT GREEN DAY
アメリカを代表するパンクバンドの1つ、グリーンデイが2004年にリリースしたアルバムが、「アメリカン・イディオット」だ。このアルバムは、制作中に開戦したイラク戦争への反対の意思を込めた、ロックオペラとして制作された。そのアルバムのリードシングルが、この曲。その後、ミュージカルも作られ、ブロードウェイで上演された。
アメリカ社会
THIS IS AMERICA CHILDISH GAMBINO
俳優としても活躍しているドナルド・グローヴァーのミュージシャンとしての名義がチャイルディッシュ・ガンビーノ。2018年にリリースした「This Is America」は、銃社会や格差、人種差別など、さまざまな問題を提起しつつ「これがアメリがだ」と歌っている。何より強烈なのがミュージックビデオだろう。不意に銃を取り出して打ったり、聖歌隊をマシンガンで打ったりと、本当にこれがアメリカの現実なのか?と思ってしまうようなカオスだ。