2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大という、未曾有の事態に世界中が見舞われた。飲食店、スポーツ、舞台、映画、音楽とあらゆるエンタメがストップした。外出することや人が集まることを自粛しなければならない。
音楽界はライブはもちろん、スタジオでのレコーディングも止まってしまった。とはいえ、自宅にスタジオを構えているアーティストもいれば、今ではパソコンがあれば、音楽づくりはできてしまう。
御多分に洩れず、アーティストも新しい音楽づくりを模索し始めた。その中で、Charli XCXがまず画期的なアルバムをリリースした。5月15日に配信したアルバム「how i’m feeling now」は彼女の自宅で制作されたアルバムだ。自宅で全てできなくとも、データのやり取りで楽曲を作り上げていくことは可能だ。
また、グラスゴーのバンド、チャーチズも、パンデミックの中でスクリーン共有ソフトを使い、メンバーが直接対面せずにアルバムの制作に取り組んでいたいことを明かしている。
レコーディングの歴史、というのは、NHKの朝ドラを見てもらうとわかるように、初期の頃はバンドも歌い手もブースに集合して、セーノで演奏する、いわゆる一発録りが普通だった。
マルチトラック・レコーディングの概念と技術が確立すると、パートごとに録音していく形に変化していく。とはいえ、機材や施設的な面からも、スタジオでの録音は基本的に変わらなかった。そして、パソコンの低価格化とインターネットの普及・進化で、一気にれ制作環境が変わっていった。全て自宅で制作した「ベッドルーム・ポップ」という言葉まで生まれる。
そしてコロナだ。
音源で聴く限りは、もはやそのクオリティの差、というのはもはやわからないかもしれない。コロナが収まった時、選択肢が増えたなか、どんなスタイルでのレコーディングがスタンダードとなっていくのか、見守りたいと思う。
(NO.16 編集部)