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Column Feature Tweet Yoko Shimizu

ラジオディレクターの出張旅行〜京都編

YOKO SHIMIZU COLUMN


ラジオディレクター清水葉子コラム

清水葉子COLUMN
RADIO DIRECTOR 清水葉子

音大卒業後、大手楽器店に就職。その後制作会社を経て、フリーのラジオディレクターとして主にクラシック音楽系の番組企画制作に携わるほか、番組連動コラムや大学でゲスト講師をつとめるなど多方面に活躍。2022年株式会社ラトル(ホームページ)を立ち上げ、様々なプロジェクトを始動中。

2月の出張は京都。低予算と時間を有効に使っての取材のため、夜行バスでの移動(!)である。

実は昨年10月にもバスで関西を訪れていた。関西地方のメディアと防災関係者の勉強会「なまずの会」のその時のテーマが〈コミュニティFM〉だったので急遽参加を決めたのだ。場所は高槻市にある京都大学の阿武山地震観測所。勉強会と懇親会に参加すると日帰りは難しいし、だったらレンタカーを借りた方がいい。しかも翌日、番組パーソナリティの智恵ちゃんと私は収録を控えていたため、コスパを考えて移動手段にバスを選んだのだった。

icon-youtube-play ガーシュウィン:「ポーギーとベス」交響組曲より「なまず横丁」

若い頃はそれこそスキーバスツアーに参加していたものだが、この歳になって夜行バスで何時間も揺られることになろうとは。この時は実はその前にN響のコンサートを聴くことになっていたので、荷物を会場のクロークに預け、終わってから神田の温浴施設で入浴してから深夜、駅のバス停へ。実際乗り込むと疲れていたせいか、意外とすぐに熟睡してしまった。普段からソファで寝込んでしまうこともある私は、ベッドや布団じゃないと眠れない、という神経質なタイプではないらしい。唯一首の安定感が欲しかった。そこで今回はネックピローを持参し準備万端。かなり首がしっかりホールドされ、これが快適である。かくしてプラス1名(with日本SDGs防災機構の小倉さん)で夜行バスは出発した。
しかし予想外のことが起きた。寝入りそうになったところで、後方から見知らぬ誰かの盛大ないびきと歯軋りが聞こえてきたのである。慌ててAirPodsを耳栓代わりに装着。音量を大きめにして聴いていたのはバッハの「ゴルトベルク変奏曲」。不眠症だったカイザーリンク伯爵が眠れるようにと、弟子のゴルトベルクが傍で演奏するためにバッハが作曲したといわれる楽曲である。この話の真偽は疑わしいものの、効果てきめん。私はほどなくして眠りについた。

icon-youtube-play バッハ:ゴルトベルク変奏曲byヴィキングル・オラフソン(P)

早朝京都駅に到着。番組でもお世話になっている東京海上日動の鵜飼さんが、京都のご実家に里帰りしていたので、取材に同行してくれることになり、早朝からモーニングにも付き合ってくれた。また拓殖大学防災教育研究センター長の濱口和久さんも大阪で講演の合間に合流、なかなか賑やかな顔触れである。

我々の番組が監修した「災害イマジネーション防災訓練」というラジオ的な手法のコンテンツを、京都市立藤ノ森小学校が実践してくれるということになっていた。従来の避難訓練では実際に災害に遭った時に思考力が働かないのではないか、というところから発想したアイディアである。地域の防災活動に積極的に取り組む〈TEAM学防災〉が協力をしてくれて、その呼びかけにより京都新聞や消防団からも注目され、思いがけず見学者が増えた。

「災害イマジネーション防災訓練」@京都市立藤ノ森小学校
「災害イマジネーション防災訓練」@京都市立藤ノ森小学校

自分たちの作った音声コンテンツが実践でどのように受け入れられるのか、少々不安だったのだが、藤ノ森小学校の4年生たちは素晴らしい見本となった。騒いで収拾がつけられない状態になることも想像していたが、いい意味で予想は裏切られ、ディスカッションの場面も熱心に取り組んでくれた。真冬の京都の体育館はコートを着ても底冷えしていて、子どもたちは軽装だったのでかなり寒かったと思う。避難所を想定した放送内容は停電の暗闇や、水などの配給を体験する場面もあり、段取りに多少時間がかかって45分の予定が1時間に押してしまった。何人かの子にはインタビューを録らせてもらったのだが、素晴らしいコメントもあり、ディレクター冥利に尽きる。防災訓練は無事終了。藤ノ森小学校の先生方、見学を終えて意見交換会の席でアドバイスを下さった皆さんにこの場を借りて感謝を申し上げたい。

訓練に参加した4年生へのイタンビュー
訓練に参加した4年生へのイタンビュー

その後にはせっかく京都に来たのだからと、地元の狸谷山不動院での節分祭に参加した。「タヌキダニのお不動さん」で親しまれるお寺は高台にあり、私たちは何百段もの階段をゼエゼエ言いながら登って行った。境内の奥の不動明王はもともと岩場にあったそうで、間近に見せていただくと確かに周りは岩肌が見え、実は後からお寺を建立したんだとか。昔は崖を登ってお参りをしていたという。現在でもその地形のため、土砂災害などの危険と隣り合わせ。それでも貫主が知る限り、これまで怪我人やお堂の破損などは出ていないと言う。

節分祭の様子@狸谷山不動院(公式HPより)
節分祭の様子@狸谷山不動院(公式HPより)

表鬼門に立つお不動さんに守られているここでは鬼は入って来ないと考えられ、節分祭も掛け声は「福来たる」のみ。撒かれた福豆もいっぱい持ち帰ったので、私の今年の邪気払いは完璧だ。ここで節分と不動明王からイメージしたバリトンによる春の歌をピックアップしよう。

icon-youtube-play ラフマニノフ:春の流れby大西宇宙(Br)

最後に京都の街に繰り出して、うどんで心身ともに温まった。同じ店で恵方巻きも食べた。ビーツで炊いた濃いピンク色の酢飯に鶏の山椒焼きとルッコラの葉を巻いた恵方巻きは、見た目が鮮やかで洒落ているが味もとても美味しい。今年の恵方は南南東。私と隣の智恵ちゃんは上体を捻って後ろ向きに食べなくてはならず、なかなか難儀したわけだが、私たちは番組の発展を祈り、黙々と恵方を向いて完食した。

「京都おめん」のカラフルな恵方巻き(公式インスタグラムより)
「京都おめん」のカラフルな恵方巻き(公式インスタグラムより)

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