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Column Feature Tweet Yoko Shimizu

暑い日こそCLASSIC!夏本番の今、聴いてほしいクラシック音楽をご紹介します。

YOKO SHIMIZU COLUMN


ラジオディレクター清水葉子コラム

暑い日こそCLASSIC!夏本番の今、聴いてほしいクラシック音楽をご紹介します。

清水葉子COLUMN
RADIO DIRECTOR 清水葉子

フリーランス・ラジオディレクター。TOKYO FMの早朝の音楽番組「SYMPHONIA」、衛星デジタル音楽放送ミュージック・バードでクラシック音楽の番組を多数担当。「ニューディスク・ナビ」「24bitで聴くクラシック」など。趣味は料理と芸術鑑賞。最近はまっているのは筋トレ。(週1回更新予定)

既に暑い日が続いているとはいえ、これからが夏本番。そんな季節に聴きたいクラシック音楽といえば、まず南米の音楽。クラシック音楽はドイツ・オーストリアなどヨーロッパが主流なのはいうまでもないことだが、今や時代はグローバル。各国のオーケストラやオペラハウスにアジアや南米の奏者たちが所属しているのも特に珍しいことではない。特にピアソラを筆頭にアルゼンチン・タンゴのナンバーは近年クラシックの演奏家たちがこぞって取り上げるプログラムだ。タンゴブームを牽引したのはヴァイオリニストのギドン・クレーメルやチェリストのヨーヨー・マなど。彼ら一流演奏家がピアソラのアルバムを相次いで発表したのがきっかけ。

なかでもおすすめはこのヨーヨー・マの演奏するピアソラの「リベルタンゴ」。TVCMでも流れていたのでご存知の方も多いのでは?そもそも「リベルタンゴ」とは自由を意味するlibertadoとtangoを合わせて作られた言葉。まさに自由に楽しむためのタンゴ音楽なのだ。アストル・ピアソラはアルゼンチンの作曲家であり、バンドネオン奏者。クラシックやジャズなどの作風を取り入れたタンゴ音楽は作曲当時異端とされ、アルゼンチン国内では非難されることも多かったが、逆にその洗練された作風が次第に広く世界中に受け入れられるようになった。

icon-youtube-play Libertango:YoYo Ma

また演奏するヨーヨー・マは中国系アメリカ人。彼は幅広いレパートリーを難なくこなす世界的チェリストだが、このアルバムも非常に洗練された、いい意味でくせがない、それでいてラテンの味わいは存分に感じられる、バランスのいい演奏を聴かせてくれる。パリで生まれアメリカで教育を受けたというコスモポリタンな彼が演奏するというのも、ピアソラがイメージした新時代の自由なタンゴにぴったりだ。この他にもこのアルバムには「タンゴ組曲」「天使のミロンガ」「カフェ1930」などピアソラを代表する楽曲が収められていて、夏の夜お酒を楽しみながら聴くのにもおすすめ。

ピアソラの洗練された南米音楽に物足りなくなった方にもう一歩踏み込んでおすすめしたいのがグスターヴォ・ドゥダメル指揮シモン・ボリバル・ユース・オーケストラ・オブ・ベネズエラのアルバム「フィエスタ!」。タイトルからして解放感があるが、真夏の太陽を思わせるノリの良いクラシック音楽だ。ドゥダメルは南米ベネズエラ出身の若手指揮者で、国の公的融資による音楽教育プログラム、エル・システマが生んだ逸材だ。

icon-youtube-play SIMON BOLIVAR:Fiesta

エル・システマは貧困から若者を救う取り組みとして1975年に音楽家で経済学者のホセ・アントニオ・アブレウ博士によって設立。近年はその活動が映画化されるなど国際的にも認知されるようになった。このアルバムではドゥダメルがベネズエラの若手奏者を集めたオーケストラを思う存分ドライブして楽しませてくれる。彼らのコンサートではアンコールで必ずといっていいほど演奏されるバーンスタインの「マンボ」。有名な「ウェストサイド・ストーリー」からの1曲だが、早いテンポでリズムを刻みながら掛け声を発するあたりは、さすがラテンの血のなせるわざ。

icon-youtube-play Bernstein:Mambo!

この他にも最近取り上げられる機会の多いメキシコ人作曲家マルケスやアルゼンチン作曲家ヒナステラなどの作品も収められ、現代の南米のクラシック音楽を知るのにも絶好の一枚だ。特にヒナステラのバレエ「エスタンシア」からの舞曲はやはり原始的なリズムが印象的な音楽で聴き応えのある作品。ドゥダメルはこういった南米の作曲家の作品を積極的に取り上げている。また近年はロサンジェルス・フィルハーモニックの音楽監督にも就任、ウィーン・フィルのニューイヤー・コンサートにも登場するなど活躍が目覚ましい。

icon-youtube-play Ginastera:Estancia

最後にご紹介するのはフランス人ピアニスト、エレーヌ・グリモーの「ウォーター」。美貌のピアニストであり、また狼の保護活動家としても知られる彼女のアルバム作りはいつもコンセプチュアルで楽しみなのだが、このアルバムは「水」をテーマにしたピアノ曲が収められている。べリオの「水のピアノ」に始まり、フォーレの舟歌やラヴェルの「水の戯れ」、リストの「エステ荘の噴水」など、そのタイトルを聴くだけでも涼やかな空気が漂ってくるようだ。この録音はいわゆるインスタレーションとして、ニューヨークのパーク・アヴェニュー・アーモリーにおいて会場に水を満たし、舞台を水に囲まれた状態でグリモーが弾いたピアノ演奏をそのままアルバム収録したという。またその曲と曲の間にイギリスのミュージシャン、ニティン・ソーニーの短い「ウォーター・トランジション」が挿入されている。このトランジションがこのアルバムの最大の特徴であり、面白さでもある。もちろんグリモーのやや硬質なタッチは楽曲の透明感、水を表現した細かいパッセージなどにぴったりだが、このトランジションが鋭角的な響きを一旦クールダウンさせる効果を持ち、このアルバムを更に魅力あるものにしている。

icon-youtube-play Hélène Grimaud:Water

それでは次回も、季節にあったクラシックをご紹介していきたいと思います。お楽しみに。

Comments

  1. 米山真弓 - 2017年8月4日 at 1:45 AM -

    夏のクラッシックですね、ヨーヨー・マ聞きたいですねー。
    これからも楽しみにしてますよ♪