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Column Feature Tweet Yoko Shimizu

クリスマスに聴きたい音楽

YOKO SHIMIZU COLUMN


ラジオディレクター清水葉子コラム

清水葉子COLUMN
RADIO DIRECTOR 清水葉子

フリーランス・ラジオディレクター。TOKYO FMの早朝の音楽番組「SYMPHONIA」、衛星デジタル音楽放送ミュージック・バードでクラシック音楽の番組を多数担当。「ニューディスク・ナビ」「24bitで聴くクラシック」など。趣味は料理と芸術鑑賞。最近はまっているのは筋トレ。(週1回更新予定)

街中にイルミネーションが灯る季節。特にクリスチャンというわけでなくても、やはりクリスマスというものは平和や愛の喜びに満ちた雰囲気が漂うものである。ラジオの番組制作の仕事をしていると否応無しに季節ネタというものを扱うことが多くなる。ディレクターたるものカレンダーを見て、季節のイベントや歳時記、暦などを常にチェックしている。今日はクリスマスの音楽について書いてみよう。

ヨーロッパで生まれたクラシック音楽は当然のことながらキリスト教とつながりが深い。教会での祈りの音楽から始まったのが最初とも言われているが、グレゴリオ聖歌は最も初期の宗教音楽だ。もともと典礼の聖歌は男性に限られていたこともあり、グレゴリオ聖歌も基本的に男声で歌われる。ハーモニーも調性もまだなく、教会旋法という単旋律を斉唱で歌う。様々なリズムと多様な音楽に溢れる現代でこのグレゴリオ聖歌を聴くと、そのシンプルさ故に厳かな気分になる。癒しの音楽として一時期ブームにもなったが、まさに究極のヒーリングミュージックともいえるだろう。

icon-youtube-play グレゴリオ聖歌

そしてバロック時代になるとバッハやヘンデルなどに代表される現代でもよく聴かれる宗教音楽が作曲される。クリスマスといえばヘンデルの「メサイア」。中でも第2部の最終曲『ハレルヤ・コーラス』は特に有名だ。余談だが私の妹が英国系キリスト教の学校に通っていて、「メサイア」全体は知らなくてもハレルヤ・コーラスだけは学校でみっちり教えられて歌っていたのを思い出す。またもう一人のバロック音楽の大家、バッハにはそのものずばり「クリスマス・オラトリオ」という曲がある。まさにクリスマス・シーズンに教会で演奏されるための音楽として作曲された。こちらも「シンフォニア」が単独で演奏されるなどこの季節の定番クラシック音楽だ。

icon-youtube-play ヘンデル:メサイア

icon-youtube-play バッハ:クリスマス・オラトリオ

さて教会音楽以外にもクリスマスの音楽はたくさんある。お馴染みチャイコフスキーのバレエ「くるみ割り人形」のストーリーはクリスマス・イヴの夜に少女クララが夢見る世界だ。街中のカフェやショッピングセンターでもしきりと流れているので、もはや知らない人はいないだろう。場面ごとに変わる登場人物たちのキャラクターに合わせて、可愛らしい楽しい音楽がいくつも散りばめられているのはチャイコフスキーのバレエ音楽ならでは。「行進曲」や「金平糖の踊り」、「花のワルツ」……等々。

icon-youtube-play チャイコフスキー:バレエ「くるみ割り人形」

こうしたクリスマスの楽曲を集めたディスクもたくさんある。中でもアヴェ・マリア集というのが各レコード会社から様々に出ている。そもそも「アヴェ・マリア」とは聖母マリアを賛美する言葉なのだが、クリスマスには特にイメージが合うということでポップス的なアレンジを施した楽曲も含めて幾多の「アヴェ・マリア」が存在する。よく知られたメロディーとしてはシューベルト。そしてバッハの平均律クラヴィーア曲集第1番のプレリュードに旋律をつけたグノー。実はヴァヴィロフという人が作曲したということが判明したが、カッチーニも含めて3大アヴェ・マリアとも呼ばれるらしい。同じ聖母マリアを賛美する歌詞で歌われるモーツァルトの晩年の傑作、「アヴェ・ヴェルム・コルプス」も短いながらもその清らかで美しい音楽が聖なる季節にぴったりだ。

icon-youtube-play シューベルト:アヴェ・マリア

icon-youtube-play バッハ/グノー:アヴェ・マリア

icon-youtube-play ヴァヴィロフ/カッチーニ:アヴェ・マリア

icon-youtube-play モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス

やはりクリスマスには声楽や合唱が聴きたくなる。更にクロスオーバーなアルバムをご紹介しよう。声楽アンサンブルのヒリヤード・アンサンブルやシャンティクリア、ヴォーチェス8といったグループ。どのアンサンブルもルネサンスから現代作曲家の委嘱作品までそのレパートリーは幅広い。シャンティクリアはサンフランシスコを拠点に活動する男声ヴォーカル・アンサンブル。私が個人的に気に入っているのは彼らの「そして地には平和を」と題された中世から現代まで様々な楽曲をミサの形式に従って並べたアルバム。グレゴリオ聖歌に始まってジェズアルド、ガブリエリなどの他、マッグリンの「アニュス・デイ(神の子羊)」での驚異的なアンサンブルは鳥肌ものだ。ヒリヤード・アンサンブルはイギリスの男声ヴォーカル・カルテット。サックスプレイヤーのヤン・ガルバレクと共演した「オフィチウム」のヒットで知っている人も多いだろう。2010年には「オフィチウム・ノヴム」という現代版の続編アルバムも発表しているが、惜しくも2014年に解散。その跡を継ぐ存在ともいえるのがヴォーチェス8。合唱王国でもある同じイギリスのウェストミンスター寺院聖歌隊出身のグループで女声も含めた男女8人からなる。彼らもやはり鍛え上げられたアンサンブルと趣向を凝らしたプログラムで新しいアカペラの世界を提示してくれる。日本では声楽や合唱曲のジャンルは今ひとつ人気がないようだが、クリスマスという特別な季節こそ人間の声による美しい響きを味わうのにはふさわしい。

icon-youtube-play ヒリヤード・アンサンブル「オフィチウム」

icon-youtube-play マッグリン:アニュス・デイ byシャンティクリア

icon-youtube-play エルガー:永遠の光(ニムロッド)byヴォーチェス8

ここに挙げた楽曲は私が担当するTOKYO FMの番組「SYMPHONIA」でもオンエア予定なので是非チェックしてみて頂きたい。

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