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ラジオディレクターの出張旅行〜多治見と飛騨高山編

YOKO SHIMIZU COLUMN


ラジオディレクター清水葉子コラム

清水葉子COLUMN
RADIO DIRECTOR 清水葉子

音大卒業後、大手楽器店に就職。その後制作会社を経て、フリーのラジオディレクターとして主にクラシック音楽系の番組企画制作に携わるほか、番組連動コラムや大学でゲスト講師をつとめるなど多方面に活躍。2022年株式会社ラトル(ホームページ)を立ち上げ、様々なプロジェクトを始動中。

担当している番組の出張が月に一度ある。遠方に行くこともあり、滞在日数が増えるとなかなかスケジュール調整が大変なのだが、これまで都内のスタジオに篭って仕事してばかりだったので、全国を飛び回るのはなかなか楽しい仕事でもある。

つい先日は岐阜県を巡ってきた。まずは多治見市のコミュニティFM局、FMたじみ=FM PiPiへの取材である。多治見市は夏の暑さで知られる土地だが、秋といえば恒例の陶器まつりが開催されていた。地元密着のコミュニティFM局では当然イベントの特番を組んだり、実際にイベントそのものに絡む仕事も多い。それが一段落した翌日なら、ということで取材を了承していただいた。

予算が限られている中での取材旅行は1カ所だけでなく複数件取材ができれば、コストパフォーマンスの面でもこれに越したことはない。そこで今回は同じ岐阜県の飛騨高山地域を放送エリアとする飛騨高山テレ・エフエム=Hits FMも合わせて回ることになった。こちらも秋の高山祭が開催中。10月改編期の忙しい時期でもあることから、取材は三日後となった。こうなると中二日はぽっかり予定が空いてしまう。そこで相棒の黒瀬智恵ちゃんともう一つの担当番組のメッセージコメントを道中収録しながら、プライヴェートな観光旅行を楽しむことにした。

私は岐阜県を訪れるのは初めてだが、高校時代は美術部で少し陶芸もかじったりしていたので、多治見の陶器や飛騨高山の工芸品に興味津々だった。智恵ちゃんは多治見名物でもあるという大好物の鰻のリサーチに余念がない。

#ラジオディレクターの出張旅行〜多治見と飛騨高山編
多治見の茶屋でいただいた器とお菓子

1日目は多治見へ。生放送と収録をつつがなく済ませ、早速周辺のお店を廻って陶器を買い漁る。陶器市は終わっていたものの、どこも2割引で販売していたので、財布の紐が緩む。大荷物を抱えて件の鰻を食べに行った。多治見の鰻は関西風で焼きがメインのため、パリパリと香ばしい。この日は高山駅前のビジネスホテルに泊まる。勢いに乗じてたくさん買い占めた器が重かったので、駅近でありがたい。せっかくなら世界遺産の白川郷も見たいので、明日はレンタカーを借りることにした。私はペーパードライバーなので運転はもっぱら智恵ちゃん頼み。

2日目はレンタカーでドライブ。秋の高山は晴天で快適な陽気である。目下ダイエット中の二人のランチは自然薯のレストランでとろろ定食。お腹を満たしたら再び車で南下し、世界遺産の白川郷を目指す。茅葺の合掌造りの集落にはたくさんの観光客が集まっていた。我々が制作しているもう一つの番組は「おうちへ帰ろう」という童謡の番組なのだが、「赤とんぼ」や「ふるさと」といった童謡の世界をそのまま写しとったような白川郷の村の風景に、日本人としてのアイデンティティーを再確認してしまう。この日の宿はワンランクアップしてリゾート系の温泉ホテル。予定が押してしまったため飛騨牛を食すのは翌日以降に変更し、ホテルのラウンジで遅い夕食。ここでもダイエット中の我々はせめての抵抗でサラダとコーヒーで我慢。それでもさすがはリゾートホテルだけあってサラダはとても新鮮で美味しかった。夜は広々とした温泉にゆっくり浸かる。

icon-youtube-play 童謡「ふるさと」byう〜み

さて、飛騨高山3日目に突入。古い町屋の住居をリノベーションして貸し別荘にするのが昨今流行っているらしく、高山から少し離れた飛騨古川駅から徒歩数分の宿を一棟貸しする宿泊プランである。目の前は酒蔵の白壁の建物とお堀があり、なかなかの風情だ。温泉とはいかなかったが、2階に大きな檜風呂もある。ただし、湯船が大き過ぎて湯を溜めるのにゆうに1時間はかかった。現代風の家具を取り揃え、和モダンなインテリアに女子二人の気分が上がる。浴衣も柄がいろいろ揃えてあって、それぞれお気に入りを着て写真撮影に興じる。

#ラジオディレクターの出張旅行〜多治見と飛騨高山編
飛騨古川の町並み

さて、旅の様子を綴るだけでなく音楽の話を。旅する作曲家として真っ先に思い浮かべるのがモーツァルトだろう。先日友人のヴァイオリニスト、丸山由里子さんがリサイタルを開き、その時演奏された1曲がヴァイオリンソナタK301だった。私は僭越ながらプログラム解説を書かせていただいたのだが、モーツァルトの旅は決して楽しいばかりではなかった。経済的な問題や母の死など、むしろ辛いことも多かった時代にもモーツァルトは次々と作品を生み出している。

icon-youtube-play モーツァルト:ヴァイオリンソナタ K301

最終日はいよいよ飛騨高山のコミュニティFMへ取材。まだ飛騨牛を食べてなかった我々は仕事前に地元のレストランのランチに駆け込んだ。人気店らしく、11時半には既に観光客の行列ができていたが、なんとか入店。朴葉味噌焼きの定食をいただき、その美味しさに舌鼓を打つ。さて、Hits FMは地元のNHK支局と同じ建物内にあった。古いけれどかなり広いスタジオがあり、そこで番組収録を済ませた。市役所の防災担当の方が特別に出演して下さり、盛り沢山の内容に。この模様は来年1月の「みんなのサンデー防災」で放送予定。ほぼ突撃取材に近い形だったのだが快く応対していただき、コロナ禍のオンライン取材では考えられない温度感と安心感に心が和んだ。

#ラジオディレクターの出張旅行〜多治見と飛騨高山編
夜の灯りに白壁が映える

最後に旅にまつわる1曲としてバッハのクラヴィーア作品を。

icon-youtube-play J.S.バッハ:カプリッチョ 「最愛の兄の旅立ちに」BWV992

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