1991年『ブートレッグ・シリーズ第1〜3集』の発売以来、四半世紀を超える長期シリーズで、発表の度に高い評価を得ているボブ・ディラン(Bob Dylan)の“ブートレッグ・シリーズ”。その最新作は、1974年に行った重要な6回のレコーディング・セッション ――ニューヨークの四日間(9月16、17、18、19日)とミネアポリスの二日間(12月27、30日)―― を収録。11月2日に世界同時リリースすることが発表された。
(情報提供:SONY MUSIC JAPAN INTERNATIONAL)
(Photo: Barry Feinstein)
このセッションでディランは1975年発売の最高傑作『血の轍(ブラッド・オン・ザ・トラックス)』を完成させた。ディランの全キャリアの中でもベストセラーの1枚である『血の轍』は、モダン・ポップソング(1964~5年頃に事実上ディランが創作したと言えるジャンル)の曲づくりの境界や構造を新たに書き換え、ビルボード誌のアルバムチャート200で1位を獲得し、RIAAダブルプラチナムに公認され、2015年にグラミー・ホール・オブ・フェイムの殿堂入りを果たした。
『血の轍』は、もともと1974年9月にニューヨーク・シティで四日間に渡って録音された。すぐにアルバムはマスタリングされ、テスト盤の配布も始まった。ところがその録音から3ヶ月後、ディランは、アルバムはもっと別のアプローチでつくられるべきだと感じ、12月末に収録曲のうちの5曲をミネアポリスのサウンド80スタジオで録音し直した。ニューヨーク・セッションのごく一部は海賊盤業者やコレクターに流出したが、いままで全貌はほとんどどんな形でも発表される事はなかった。
スタンダード・エディション(CD1枚)では、オリジナル・アルバムに収録された10曲が、すべてニューヨーク・セッション録音の感動的で心に響く別ヴァージョンによって姿を現す事となった。加えて「アップ・トゥ・ミー」の未発表別テイクも収められている。
デラックス・エディション(完全限定盤/CD6枚組)には、ニューヨーク・セッションのアウトテイク、未完成なども含めたすべてと、ミネアポリスのサウンド80セッションの現存する5曲が録音順にまとめられている。ブートレッグ・シリーズのプロデューサーたちが可能な限り良質な音源を探した結果、収録曲の多くにはオリジナルのマルチトラック・セッション・テープが使われている。ただ、ミネアポリス・サウンド80のセッションで残されていたテープは、発売された『血の轍』に収められた5曲のマルチトラック・マスターだけだった。このテープを『モア・ブラッド、モア・トラックス(ブートレッグ・シリーズ第14集)』に収めるために、新たなミキシングとマスタリングがおこなわれた。
『モア・ブラッド、モア・トラックス(ブートレッグ・シリーズ第14集)』のライナーノーツにジェフ・スレイトはつぎのように記している。「スタジオのディランはヘッドフォンをつけることさえせずにライヴですばらしい演奏を――彼が録音したなかでも最高の演奏を――つぎつぎと録音している。ほかの多くの演奏者たちとちがって、サウンドの完成度を高めるためのオーヴァーダブもほとんど施していない。録音された曲のなかには、ディラン――ギターとハーモニカと一連な偉大な曲を携えたひとりのシンガー ――がいて、適切な箇所で聞く者の心を躍らせ、必要な箇所で聞く者の心を打ち砕く……またここに収められた歌と演奏は、ぼくたちが聞いたどのヴァージョンよりも純粋な状態にある。アルバム『血の轍』制作のとき、ディランはプロデューサーのフィル・ラモーンに命じて、ほとんどのマスターの速度を2パーセントから3パーセント、上げるよう指示した。この方法は、1960年代から70年代にかけて、とくにAMラジオ向けのレコードに頻繁に用いられた。そうすることで曲の勢いが増し、リスナーの気をひきやすいと考えられていたのだ。公式のものも非公式のものも、これまで発表されていたニューヨーク・セッションの曲のほとんどは、ディランの要請によって速度を上げたヴァージョンだった。『モア・ブラッド、モア・トラックス(ブートレッグ・シリーズ第14集)』で初めて、ディランが録音したときのままの形の曲を聞くことができる」
スタンダード・エディションの『モア・ブラッド、モア・トラックス(ブートレッグ・シリーズ第14集)』はニューヨークのA&Rスタジオ・セッションで録音された11曲を収めたCD1枚(LP2枚:輸入盤のみ発売)で発売される。
デラックス・エディションは完全生産限定盤として発売されるため、初回生産分が完売したあと、追加生産されることはない。この貴重なボックスセットには、ロック史研究家のジェフ・スレイトによるライナーノーツと、ディランの手書きで歌詞を書き留めた57ページのノートブックを完全複製したハードカバーのフォト・ブックも収容されている。このノートブックを読めば、『血の轍』に収められた歌が、どのように歌詞を書き換えながら完成させていったかがわかるだろう。
ボブ・ディラン・ブートレッグ・シリーズの過去の2作品が、グラミー賞で“ベスト・ヒストリカル・アルバム”を受賞している。2017年には『ボブ・ディラン:ザ・カッティング・エッジ1965ー1966(ブートレッグ・シリーズ第12集)』が、2016年には『ボブ・ディラン:ザ・ベースメント・テープス・コンプリート(ブートレッグ・シリーズ第11集)』がそれぞれ獲得した。
◆ 「彼女にあったらよろしくと(テイク1)」 先行試聴
ニューヨークでの『血の轍(ブラッド・オン・ザ・トラックス)』セッションの初日である1974年9月16日に、最初に録音した曲。テープに残されたものとしては、これ以上ないぐらい張りつめて迫力があり、ディランの声が心に突き刺さる。
Bob Dylan – If You See Her Say Hello (Take 1) (Lyric Video))
◆ リリース情報
● 『モア・ブラッド、モア・トラックス(ブートレッグ・シリーズ第14集)』 スタンダード・エディション
★ 2018年11 月2日世界同時発売予定
★ 英文完全翻訳掲載のカラー・ブックレット
★ 書下ろし解説・歌詞・対訳付の日本版ブックレット
★ Blu-Spec CD 2
★ 1枚組(SICP31210 / ¥2,400+税)
【収録曲】
01. ブルーにこんがらがって (9/19/74, Take 3, Remake 3)
02. 運命のひとひねり (9/16/74, Take 1)
03. 嵐からの隠れ場所 (9/17/74, Take 2)
04. きみは大きな存在 (9/16/74, Take 2)
05. 雨のバケツ (9/18/74, Take 2, Remake)
06. 彼女にあったら、よろしくと (9/16/74, Take 1)
07. リリー、ローズマリーとハートのジャック (9/16/74, Take 2)
08. 朝に会おう* (9/19/74, Take 1, Remake)
09. 愚かな風 (9/19/74, Take 4, Remake)
10. おれはさびしくなるよ (9/17/74, Take 1, Remake)
11. アップ・トゥ・ミー (9/19/74, Take 2, Remake)
*を除き全て未発表
● 『モア・ブラッド、モア・トラックス(ブートレッグ・シリーズ第14集)』 デラックス・エディション完全生産限定盤(6枚組)
★ 2018年11 月2日世界同時発売予定
★ 未発表写真満載の豪華フォト・ブック(輸入)
★ 英文解説ブックレット(輸入)
★ 三方背BOX(輸入)
★ 英文の完全翻訳・書下ろし解説・歌詞・対訳付の日本版ブックレット
★ Blu-Spec CD 2
★ 6枚組(SICP31211-6 / ¥20,000+税)
【収録曲】
● DISC 1
A & R Studios, New York
September 16, 1974
01. 彼女にあったら、よろしくと(テイク 1)– solo
02. 彼女にあったら、よろしくと*(テイク2)– solo
03. きみは大きな存在(テイク 1)– solo
04. きみは大きな存在(テイク 2)– solo
05. 運命のひとひねり(テイク 1)– solo
06. 運命のひとひねり(テイク 2)– solo
07. きみは大きな存在(テイク 3)– solo
08. アップ・トゥ・ミー(リハーサル)– solo
09. アップ・トゥ・ミー(テイク 1)– solo
10. リリー、ローズマリーとハートのジャック(テイク 1)– solo
11. リリー、ローズマリーとハートのジャック(テイク 2)– solo
● DISC 2
A & R Studios, New York
September 16, 1974
01. 運命のひとひねり(テイク 1A) – with band
02. 運命のひとひねり(テイク 2A) – with band
03. 運命のひとひねり(テイク 3A) – with band
04. コール・レター・ブルース(テイク 1)– with band
05. 朝に会おう*(テイク 1)– with band – edited version included on Blood On The Tracks test pressing and previously released on Blood On The Tracks
06. コール・レター・ブルース*(テイク 2)– with band – previously released on The Bootleg Series, Vols. 1-3: Rare and Unreleased, 1961-1991
07. 愚かな風(テイク 1)– with band
08. 愚かな風(テイク 1、リメイク)– with band
09. 愚かな風(テイク 3、インサート)– with band
10. 愚かな風(テイク 5)– with band
11. 愚かな風(テイク 6)– with band
12. おれはさびしくなるよ(リハーサル、テイク 1)– with band
13. おれはさびしくなるよ(テイク 2)– with band
14. おれはさびしくなるよ(テイク 3)– with band
15. おれはさびしくなるよ(テイク 4)– with band
16. おれはさびしくなるよ(テイク 5)– with band
17. おれはさびしくなるよ(テイク 6)– with band
18. おれはさびしくなるよ(テイク 6、リメイク)– with band
19. おれはさびしくなるよ(テイク 7)– with band
20. おれはさびしくなるよ(テイク 8)– with band
● DISC 3
A & R Studios, New York
September 16, 1974
01. ブルーにこんがらがって(テイク 1)– with bass A & R Studios, New York September 17, 1974
02. きみは大きな存在(テイク 1、リメイク)– with bass and organ
03. きみは大きな存在*(テイク 2、リメイク)– with bass, organ, and steel guitar –included on Blood On The Tracks test pressing and previously released on Biograph
04. ブルーにこんがらがって(リハーサル)– with bass and organ
05. ブルーにこんがらがって(テイク 2、リメイク)– with bass and organ
06. スペイン語は愛の言葉(テイク 1)– with bass and piano
07. コール・レター・ブルース(リハーサル)– with bass and piano
08. おれはさびしくなるよ(テイク 1、リメイク)– with bass and piano
09. 嵐からの隠れ場所* (テイク 1)– with bass and piano – previously released on the Jerry McGuire original soundtrack
10. 雨のバケツ(テイク 1)– with bass
11. ブルーにこんがらがって(テイク 3、リメイク)– with bass
12. 雨のバケツ(テイク 2)– with bass
13. 嵐からの隠れ場所(テイク 2)– with bass
14. 嵐からの隠れ場所(テイク 3)– with bass
15. 嵐からの隠れ場所*(テイク 4)– with bass – previously released on Blood On The Tracks
● DISC 4
A & R Studios, New York
September 17, 1974
01. おれはさびしくなるよ(テイク 1、リメイク 2)– with bass
02. おれはさびしくなるよ*(テイク 2、リメイク 2)– with bass – previously released on Blood On The Tracks
A & R Studios, New York
September 18, 1974
03. 雨のバケツ(テイク 1、リメイク)– solo
04. 雨のバケツ(テイク 2、リメイク)– solo
05. 雨のバケツ(テイク 3、リメイク)– solo
06. 雨のバケツ(テイク 4、リメイク)– solo
A & R Studios, New York
September 19, 1974
07. アップ・トゥ・ミー(テイク 1、リメイク)– with bass
08. アップ・トゥ・ミー(テイク 2、リメイク)– with bass
09. 雨のバケツ(テイク 1、リメイク 2)– with bass
10. 雨のバケツ(テイク 2、リメイク 2)– with bass
11. 雨のバケツ(テイク 3、リメイク 2)– with bass
12. 雨のバケツ*(テイク 4、リメイク 2)– with bass – previously released on Blood On The Tracks
13. 彼女にあったら、よろしくと(テイク 1、リメイク)– with bass – previously included on Blood On The Tracks test pressing
14. アップ・トゥ・ミー(テイク 1、リメイク 2)– with bass
15. アップ・トゥ・ミー(テイク 2、リメイク 2)– with bass
16. アップ・トゥ・ミー(テイク 3、リメイク 2)– with bass
17. 雨のバケツ(リハーサル)– with bass
18. 朝に会おう*(テイク 1、リメイク)– with bass – previously released on the “Duquesne Whistle” 7” single
19. 朝に会おう(テイク 2、リメイク)– with bass
20. 雨のバケツ(テイク 5、リメイク 2)– with bass
● DISC 5
A & R Studios, New York
September 19, 1974
01. ブルーにこんがらがって(リハーサル、テイク 1、リメイク 2)– with bass
02. ブルーにこんがらがって(テイク 2、リメイク 2)– with bass
03. ブルーにこんがらがって*(テイク 3、リメイク 2)– with bass – included on Blood On The Tracks test pressing and previously released on The Bootleg Series, Vols. 1-3: Rare and Unreleased, 1961-1991
04. 運命のひとひねり(テイク 2、リメイク)– with bass
05. 運命のひとひねり*(テイク 3、リメイク)– with bass – previously released on Blood On The Tracks
06. アップ・トゥ・ミー(リハーサル、テイク 1、リメイク 3)– with bass
07. アップ・トゥ・ミー*(テイク 2、リメイク 3)– with bass – previously released on Biograph
08. 愚かな風(リハーサル、テイク 1-3、リメイク)– with bass
09. 愚かな風(テイク 4、リメイク)– with bass
10. 愚かな風(テイク 4、リメイク)– with organ overdub – included on Blood On The Tracks test pressing and previously released on The Bootleg Series, Vols. 1-3: Rare and Unreleased, 1961-1991
11. きみは大きな存在(テイク 1、リメイク 2)– with bass
12. 朝に会おう(テイク 1、リメイク 2)– with bass
13. 朝に会おう(テイク 2-3、リメイク 2)– with bass
● DISC 6
A & R Studios, New York
September 19, 1974
01. きみは大きな存在(テイク 3-6、リメイク2)– with bass
02. ブルーにこんがらがって(リハーサル、テイク 1-2、リメイク 3)– with bass
03. ブルーにこんがらがって(テイク 3、リメイク 3)– with bass Sound 80 Studio, Minneapolis, MN December 27, 1974
04. 愚かな風*– previously released on Blood On The Tracks
05. きみは大きな存在*– previously released on Blood On The Tracks Sound 80 Studio, Minneapolis, MN December 30, 1974
06. ブルーにこんがらがって*– previously released on Blood On The Tracks
07. リリー、ローズマリーとハートのジャック*– previously released on Blood On The Tracks
08. 彼女にあったら、よろしくと*– previously released on Blood On The Tracks
*を除き全て未発表