エレクトロミュージック、と聞くと、EDMだったりハウスだったり、いろいろなサウンドを思い浮かべると思う。その中に、どれくらいインストゥルメンタル(以降インスト)楽曲が含まれているだろうか?
クラシックやジャズにおけるインスト楽曲は、著名な楽曲も多く、歌があろうがなかろうが、音楽は音楽、という一定の地位を確立しているように思う。しかし、ポップミュージックの世界では基本的に歌ありのものがポピュラーだ。もちろん歌詞の世界だったり、ヴォーカルの歌声によって惹きつけられる部分が大きいからだ。
著者も以前は、ラジオ番組を制作している上で、FM番組でインスト楽曲をオンエアする、というのはなぜか抵抗感を持っていた。そこには曲=歌、というなんとも頭の固い固定概念があったからだ。それでも色々な番組を制作させてもらい、改めて色々な音楽に触れる機会を踏まえると、インストもやっぱり素晴らしい!という答えに行き着いた。
バンドでも素敵なインストバンドはたくさんいる。例えば、日本のバンドで、SPECIAL OTHERSやYOUR SONG IS GOODといったバンド。もちろんボーカル楽曲も出しているが、ベースはインストだ。
SPECIAL OTHERS – Laurentech 【MUSIC VIDEO SHORT.】
そして、今、ポップミュージックで最も大きな勢力を誇っているエレクトロサウンドにおいても、インスト楽曲はたくさんある。
Apex TwinやThe Chemical Brothers、Daft Punkといったアーティストも数多くインスト、もしくはヴォーカルの入っていない名曲を世に送り出している。そして、数多くのビートメイカーが素晴らしいインスト楽曲を出しているのだ。個人的に好きなアーティストがGold PandaやTychoだ。そして、また一人、好きなアーティストに加わったのが、Geoticというアーティスト。先日、ニューアルバム『Traversa』をリリースした。
Geotic – Knapsack
Geotic – Actually Smiling
LAのビートメイカー、Will Wlesenfeldのプロジェクト。彼はBathsという名義でも活動しているが、こちらはヴォーカルの割合もより多く、実験的だが、Geoticではアンビエントなサウンドプロデュースとなっている。彼自身はこの2つのプロジェクトについて、こう語っている。
「Bathsはアクティブなリスニングで、Geoticはパッシブなリスニング」
Baths – “Out” (OFFICIAL VIDEO)
なるほど、聞く比べるとよく分かる。
Bathsは、ヴォーカルもしっかりと際立たせてあるし、楽曲ごとにテンポやアレンジも大きく変わり、「次はどんな音なんだろう?」と、ついつい耳をそばだててしまう。一方のGeoticは、通して聴いていて気持ち良い。シンセのリフレインと、程よいテンポのドラム、ところどころに入ってくる環境音。全てにおいて、気持ち良いのだ。Tychoに通じるサウンドだが、Tychoがどことなく陰のあるサウンドも出しているのに対して、Geoticはよりポジティブなサウンドなのだ。
つい先日、なんと来日していたということで、著者は見逃してしまったのだが、こんなに聴いていて気持ちの良いサウンドが、この世にはまだまだあるんだな、と彼のアルバムを聴いて衝撃を受けた。ぜひ、気になった方はご一聴していただきたい。
(NO.16編集部)