LGBTのような性的指向の多様性、人種の多様性、そういったものが正当に認められるような時代になってきた。音楽においても、さまざまなルーツを持つアーティストが活躍する時代になった。最近で言うと、Beabadoobeeが挙げられるだろうか。彼女は3歳の時にイギリ・ロンドンに移住したが、生まれはフィリピンだ。物心がついたときは生粋のイギリス人だっただろう。彼女はバイオリンを習っていたことから音楽的素養は確かなものがあっただろう。また、インディ・ロックを聴いて育ったそうで、デビューアルバム「Fake It Flowers」は、イギリスだけでなく、アメリカのIncubusのようにしっかりとしたメロディの後ろで静と動が折り重なったサウンドが鳴り響く。エレクトロ調のサウンドが全盛の中、ギターサウンドを前面に押し出したアレンジでヒットしているのは、個人的には驚きとともに喜びを感じている。
また、世界中のチャートでBTSやBLACKPINKが上位に食い込んでいるのも興味深い。J-POPと比べるとK-POPの本格的な海外志向がよく分かると思う。とはいえ、ボーイズグループはすでにトレンドを終えてしまった感がある現代で、7人と言う大所帯のボーイズグループがここまでヒットしているのがすごい。
また、南半球のアーティストも元気だ。オーストラリアといえば、AC/DC、メン・アット・ワーク、INXS、カイリー・ミノーグやJet、The Vines、ハイエイタス・カイヨーテ、テーム・インパラと、絶えず良質なアーティスト、しかも本当にサウンドに多様性があるアーティストを輩出している。最近でいえば、「Dance Monkey」が大ヒットしたTones And Iだろうか。お隣のニュージーランドからもBENEEというインディー・ポップの新星が登場している。
アメリカでは何年も前からヒスパニック系の増加とともに、ラテン系の楽曲の人気も高まっている。
また、以前も書いたが日本人のJojiがアメリカで豪華なアーティストをフィーチャーしたアルバムをリリースしたり、イギリスではOrono率いるSuperorganismが活動していたりと、日本をルーツに持つアーティストも世界で活躍している。
翻って日本の音楽シーンを見てみると、なかなかどうしてドメスティックな状況が、以前より色濃くなっているような気がしてならない。藤井風のように良質なアーティストも続々出てきているが、J-POPだけでなく、いろいろな音に耳を傾けられる環境があってもいいのではないだろうか。
(NO.16編集部)