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[コラム] ロックのリバイバルは来るのか?

NO.16編集部コラム


音楽のトレンドを牽引するアメリカのヒットチャートと言えば、ここ数年はヒップホップ・ミュージックが席巻していた。少し時間を遡ると、EDM / エレクトロ勢だろう。もちろん、それぞれが融合しつつ、新しい局面をグラデーション的に生み出していくわけだが、とりわけ弱体化したのがロックだろう。パンク〜ブリットポップ〜ミクスチャーロック〜ガレージリバイバル〜と、勢いのあるサウンドは変化しつつも、チャートの上の方には必ずと言っていいほど、強い存在感を放つロックバンド、もしくはロックシンガーがいた。しかし、ここ10年ほどは「ロック」がヒットすることがなくなった。

これは音楽を作るスタイルの変化、というのも一つ大きな要因だろう。これまでは、それこそ誰かから譲ってもらったり、中古で安く買ったギターやベースを、ガレージや倉庫に持ち込んで音を出すスタイル、つまりバンドこそが手軽に始められる音楽の筆頭だっただろう。しかしテクノロジーの進化により、パソコンや電子機器が手頃な価格で手に入るようになり、1人で、自宅で、音楽制作ができるようになった。それこそ、「楽器」を演奏することができなくとも楽曲制作ができる時代なのだ。そういった音楽を志向して制作する人が増えれば、求める音楽も自然と同じベクトルの音楽になるのは至って自然だろう。もちろん、他にも色々な要素があり、EDM / エレクトロが人気を得ていった。

ヒップホップに関しては、ラップミュージックの根底に流れるエネルギーそのものが日本とは違うもので、しかも筆者自身もそこまで詳しくなく、多くなことは言えないが、強力な、そして共感できるメッセージが求められているから、なのではないだろうか。こうした流れの中で、ロックバンドが生き残っていくのも、とても大変な時代になった。あくまで自分達のスタイルや音を貫き通すのか、それとも時代に合わせていくのか。前者は前者で、昔からの固定ファンがいるので、安泰かもしれないが、新しいリスナーに届くかどうかは、なかなか見えてこない。後者は、その時代のリスナーには響くかもしれないが、もしかしたら昔からのリスナーが変化についていけず離れていってしまうかもしれない。そんな微妙なバランスの中、音を作り続けているのだろう。COLDPLAYはまさに後者を選択した代表的なバンドと言えるかもしれない。

そんな中で、ロックは2000年代前半の勢いを失いながらも、消え去ることはなく、ひっそりとしかし確実に音を鳴らし続けてきた。ここ数年、少しずつではあるが、ロックバンドも元気になってきたかな、と思えるようになった。そして、オリヴィア・ロドリゴの登場は大きな衝撃を受けた。彼女はいわゆるZ世代の若いアーティストだ。同じ世代(年齢的にはちょっと上だが)には、ビリー・アイリッシュもいる。それこそビリーはアルバム全てを自分の部屋で作ったそうなので、EDM、DTMの延長上にいるアーティストだ。

しかしオリヴィアは、ロックテイストのサウンドをチョイスした。大ヒット曲となった彼女の代名詞とも言える「ドライバーズ・ライセンス」は、アコースティック調の楽曲だったが、デビューアルバムとなった「SOUR」には「good 4 u」という強力なロック・チューンが収められていた。曲の長さも3分なく、まさにガールズパンク、と言った楽曲だ。かつて、ロック・プリンセスとしてヒットを飛ばしたアヴリル・ラヴィーンも、オリヴィア・ロドリゴによってロックが取り戻された、と絶賛している。アヴリル自身も久しぶりの新曲「Bite Me」は、まるでデビュー当時を思い出させるようなストレートなロックだった。

そして、ここに来てUKロック勢の懐かしい名前もちらほら見るようになった。まずはフランツ・フェルディナンド。「Take Me Out」や「Do You Want To」などを大ヒットさせた、ガレージリバイバル組のバンドだが、来年3月にベストアルバムのリリースを発表すると同時に新曲もリリースした。日本のラジオではそこそこオンエアをされたようだ。そして、より驚いたのが、Bloc Partyの新曲だ。こちらもイギリスのバンドだが、デビュー当時はポストロック/ポストパンク的なアプローチだったが、その後、エレクトロやヒップホップ色を強くしていった。ただ、1st、2ndアルバムほどのヒットには結び付かず、活動自体も下火になっていたのだが、ここにきて新曲「Trap」をリリース。これがまるでデビュー当初のような勢いを再び聞かせてくれているのだ。個人的にはとても嬉しい変化、というか回帰だった。

音楽のトレンドというのは、ファッションと同じくぐるぐると回っていくものなのだろうと、ここ最近は思い知らされている。少し前は80’sサウンド、ここ最近は70’sサウンドと、我々世代からすれば懐かしいと感じる音が、今の若い世代には新鮮に聞こえるのか、ヒットしている。日本で言うなら、シティ・ポップや歌謡曲、だろうか?すなわち、再びロックが勢いを取り戻すのも、ごく自然な流れで、時間の問題なのだろう。時代は進んでいるので、単純な焼き直しになることはありえない。2020年台、もしくは2030年台バージョンの、新しいロックの誕生が目前に迫っているのかもしれない。一体どんな音になるのか、楽しみで仕方ないではないか。

(NO.16編集部)