Z世代、と聞くとどんなイメージを持つだろうか?1990年台から2000年台にかけて生まれ、デジタルネイティブな環境で育っている世代だ。レコードもカセットテープも現役で、携帯電話もなかった時代に青春を過ごした筆者とは、メッセージの伝達速度も機会も全てが別次元だろう。
そんな世代が、今、社会で発信力を高めている。これまでであれば、今のZ世代のようなジェネレーションの意見は、いわゆる「これだから若い者は・・・」的な風潮で押し流してきた。しかし、時代は代わり、今のZ世代は、これからの世界をになっていく人たちである。未来があり、だからこそ彼らのメッセージというのは、私たち年長者にとってもとても大切なものになるだろう。
代表的なメッセンジャーといえば、やはりグレタ・トゥーンベリさんが挙げられるだろうか。筆者自身も彼女の攻撃的なメッセージの発し方は、いかがなものかな、と思うこともあるのだが、裏を返せばそれだけ彼女たちが危機的に受け止めているということなのだろう。実際、環境問題というのは、30年前は世間に「そんなこと言ってもまだ先のことだろう」というような空気感があったのは事実だ。
ミュージックシーンにおいても、Z世代は勢いがある。代表的なアーティストといえば、まずはビリー・アイリッシュ。現在19歳。全ての楽曲を自宅で、兄と二人で作り上げ、グラミー賞主要4部門を受賞するなんて、これまでは考えられなかったことが、現実に起きたのだ。そればかりか彼女は、その若さで、大統領選挙についても明確なメッセージを発信したり、自らがトゥレット症候群であることを告白するなど、就職氷河期世代の自分が恥ずかしくなってしまうほどの芯の強さを持っている。ダークな側面が多い彼女の楽曲も、飾ることなく自分自身が表現したいものを表現した結果が、「bad guy」などのヒット曲となったのだろう。そもそも彼女は「売れたい」という気持ちで曲を作っているわけではないのだろう。自分自身の表現に、共感と評価が自然に集まって行った理想の形だ。
そして、この「表現したいものを世界中に向けて発信できる」というプラットフォームを使いこなすことこそが、Z世代の最大の武器なんだと思う。
そして、もう一人、18歳のオリヴィア・ロドリゴは、先日リリースしたデビューアルバム「サワー」が、アメリカ、イギリスを含む11の国と地域でチャート1位を獲得している。もちろん、我々世代のチャートとは違うので、純粋にアルバムが「売れた」というよりは再生回数などが大きな割合を占めているのではないかと想像するが。
同世代と言っても、ビリー・アイリッシュとはかなり相対的な存在かもしれない。フォーク調の楽曲やロック調の楽曲に乗せて、恋愛感情を赤裸々に歌っている。
18歳でこの表現力、というのは本当に驚かされるが、元々は女優としてのキャリアの方が早いので、それも納得か。この辺りはアリアナ・グランデとも共通する。
ビリー・アイリッシュとオリヴィア・ロドリゴ。この2人のどっちがすごい、なんてことが言いたいのではなく、どちらもZ世代のオピニオン・リーダーであることは間違い無いのだ。
翻って、日本ではなかなかZ世代の人にまでスポットライトが当たっていないように感じられる。それは我々大人世代が耳を傾けないからなのか、それともZ世代の発信が比較的大人しいからなのか、それは分からないが、これからの世代の主役でもある彼らのメッセージというのはとても重要なことには違いない。得てして歳をとると感覚や考え方はどうしても凝り固まりがちになってしまうのだが(今の日本の政治を見るとそれがよく分かるような気がするが)Z世代のメッセージを受け止め、対等に話し合うためには、大人世代も相当な勉強と覚悟が必要なことは、容易に想像がつく。
次にとんでもないZ世代が出てくるのは、アメリカかイギリスか、それとも日本か・・・
(NO.16編集部)