皆さんはポッドキャストというメディアを利用しているだろうか?音声メディアの一つとして、ここ数年、日本でも一気に注目度が高まっている。メディアとしてはもう15年以上の歴史があり、海外では人気ポッドキャスターがいるほど、メジャーなメディアの一つとなっている。一方、日本ではラジオ番組の裏コンテンツ、サブコンテンツ的な扱いが長くされており、ラジオリスナーの減少も相まって、そこまで広がることはなかった。だが、ここ数年の「音声メディアへの注目の高まり」に伴い、日本でも上質なオリジナルコンテンツを作ろうという動きが出てきている。ただ、ラジオと同じで広告(スポンサー)を得ることでコンテンツを作る、という流れが出てきており、果たしてどこまで自由度が高い良質なコンテンツが生まれるかは、未知数である。
ただ、海外では、その「自由度」と「人気」、そして情報を発信する責任と、さらには配信プラットフォームとしての責任、という色々な問題が絡み合った出来事が起きている。
ジョー・ローガンという人気ポッドキャスターが、自身のポッドキャスト番組で、新型コロナウイルスに関して、ゲストを招いてトークをしたのだが、そのゲストが反ワクチンであったり、パンデミックに関して根拠のない主張を繰り返したんだとか。もちろん、そのコンテンツは音楽配信プラットフォーム、「Spotify」でも配信されているのだが、シンガーソングライターのニール・ヤングがこれを問題視。言論の自由について何かいうつもりはないが、こうしたコンテンツと同じプラットフォーム上に自分の楽曲を置いておきたくない、として、Spotify上から自身の音楽を引き上げてしまったのだ。さらに、このニール・ヤングの動きに、ジョニ・ミッチェルも賛同。現在、一部の音源を除いて、ニール・ヤングとジョニ・ミッチェルの楽曲は、大半がSpotifyで聴けない状態となっている。
プラットフォームとして、言論の自由をどのように担保していくのか、というのはとても難しい問題だろう。莫大な数のコンテンツが日々アップされている中で、全てのコンテンツを一言一句チェックすることは不可能であろう。おそらく、通報制度などチェック体制は取っているだろうが、中でもこうした多くのリスナーがいるコンテンツに関しては、プラットフォーム側としても手放したくない存在であることは間違いない。しかし、アーティストが離れていってしまうようでは、本末転倒・・・悩ましい。アーティスト側としても、どこのプラットフォームに配信をするかという選択する権利はあるわけだし、Spotifyから引き上げると、それだけリスナーが減るというデメリットも理解した上でアクションなのだ。
ただ、これはインターネットだけじゃなく、テレビであったり、雑誌でも同じことはこれまでも起きていたことだろう。もちろん、まず第一にコンテンツを発信する側に、その内容に関して吟味する必要はある。そして受け取る側も、全てを真に受けるのではなく、それが正しいのか、自分にとって有益なのかということを常に考え続ける必要があるのではないだろうか?
その上で、今回、ニールとジョニは、楽曲を引き上げるというアクションを起こすことを選択したのだ。気軽に彼らの楽曲が聴けなくなるというのは至極残念ではあるのだが、今回のことで一つ、気がついたのは、やはりCDであったりレコードであったりという、いわゆるフィジカルメディアというものを持っていれば、いつでも聞くことができるのである。サブスクリプション全盛ではあるが、今一度、フィジカル・メディアを見つめ直して、自宅に眠っているCDやレコードを掘りこしてみてはいかがだろう??
(NO.16編集部)