<特集 – ニュージャンル>
日々進化し続ける音楽。ジャンルも、少しずつ姿をかえ、新しいものが生み出されている。今週はそんな新しいジャンルの音を特集。
ADM
10% KAYTRANADA
EDMならぬ「ADM」が、ここ数年のダンスミュージック・シーンのトレンドの一つとなっているようだ。ADMの「A」は、アコースティックの「A」で、テンポ的にも緩めのエレクトロを指す言葉のようだ。かつての4つ打ちバキバキのEDMは確かにメインストリームではなくなり、今ではテンポも遅めのエレクトロが主流かもしれない。あのチェインストレンジャーズも、初期のヒット作「Selfie」と、最近のヒット曲、例えば「Closer」を聞けばその差は歴然だろう。そんなADMの代表とも言えるかもしれないのが、カナダのアーティスト、ケイトラナダ。この曲もどこか生感のある、ゆるめのハウスに近いサウンドプロデュースとなっている。
Gqom
Angeke Idando Kazi
イギリス、ロンドンで拡大しているのが、「Gqom(ゴム)」と呼ばれるダンスミュージック。南アフリカ、ダーバンで生まれたというこの音楽は、イギリスのグライムやダブステップといったアンダーグラウンドな雰囲気や要素と、アフリカのリズムやパーカッションが結びついた、新しいアフロ・ハウスの一つ。確かに、かつてのUKガラージのような暗い雰囲気がありつつも、あそこまで攻撃的ではなく、どちらかというとトリップ感の方が強い。イギリスではラジオ番組ができていたり、Spotifyなどでもすでにプレイリストが組まれているので、気になる人は聞いてみて欲しい。
WAVE
She Made Me Cry Kareful
続いてもエレクトロの新ジャンル。「ウェーヴ」と呼ばれるジャンルを代表するアーティストの1人、ケアフルの曲。こちらもトラップやダブステップ、ドラムンベースといった音楽から派生したジャンルで、クラブでかけることを目的としているというよりは、どちらかというと聴かせるのが最たる目的のようで、ゴムと同じくどこか内省的な暗い印象のサウンド。そもそも、クラブに行けない若いクリエイターがSoundcloudといったインターネット上の拡散させていた音楽。しかし今では実際のクラブに進出いているということで、どんなフロアになるのかはなかなかイメージがつかないが、トリップホップなど、暗く、ダウンテンポなダンスミュージックが時代時代で醸成されるイギリスならではの新ジャンルかもしれない。
ブルックリン・ドリル
Welcome To The party Pop Smoke
EDMに負けないほどサブジャンルが生まれるのがヒップホップだ。そんな中で、新しい流れの一つとなっているのが「ブルックリン・ドリル」。「ドリル」とは、2010年ごろにシカゴで生まれたサブジャンル。シカゴの貧困だったり、暴力の状況などをリアルに反映したリリックやサウンドで、注目を集めた。その後、ドリルはUKへと渡り、そして、ニューヨーク、ブルックリンへと飛び火した。ブルックリンでも貧困であったり、ギャング同士の抗争といった、ドリルの特性と街の背景が一致していた。おそらくそのリリックなどは、それぞれの土地によって特性があるのだろう。そんなブルックリン・ドリルの急先鋒だったポップ・スモークだが、去年、強盗の凶弾に倒れ、20歳という若さでこの世を去ってしまった。
エレクトロ・スイング
Black Betty Caravan Palace
音を聞けば、どこかで聞いたことがあるような既視感に襲われる。「エレクトロ・スイング」と呼ばれるこのジャンルは、ヨーロッパでは2000年ごろからすでに注目を集めていたジャンルの一つである。「エレクトロ・スイング」という名前からもわかる通り、エレクトロとスイングをミックスしたサウンドだ。日本でもここ数年、注目度を高めているそうで、今後、ラジオでもどんどんこのサウンドが流れてくることになりかもしれない。