<特集 – サンプリング曲特集>
既存の楽曲や音源の一部や自然音などを、新たな楽曲を構成するパーツとして取り込む「サンプリング」。音楽的にはヒップホップのレジェンド、シュガーヒルギャングが、シックの「Good Times」を使った「Rapper’s Delight」によって、切り開かれたと言っても良い。現在は、ヒップホップだけでなくあらゆるジャンルで、サンプリングは一つの表現方法となっている。
DIDO
STAN EMINEM
エミネムの名前を一躍世界中に押し広げた代表曲。楽曲の冒頭から、ラジオから流れてくるかのように聞こえてくる、女性ヴォーカルが特徴的なのだが、この女性ヴォーカルの楽曲が、サンプリングされているということ。元ネタは、イギリスのシンガーソングライター、ダイドの「Thank You」という楽曲。日本では全くの無名だったダイド。アルファベット表記はDIDOで、当時のレコード会社の資料には「ディド」と表記されたりもした。エミネムの「Stan」のヒットによって、元ネタであるダイドも、世界中で認知されるようになった。
GIGI MASIN
IT’S IN OUR HANDS BJORK
アイスランドが誇る歌姫、ビョーク。独特のサウンドやヴィジュアル、ヴォーカルでオリジナリティ溢れる世界観を生み出しているアーティストだが、彼女もまたサンプリングを駆使した楽曲作りを行なっている。
2002年リリースのベストアルバムに収録された新曲「IT’S IN OUR HANDS」
の前半でサンプリングされているのは、ジジ・マシンの「CLOUDS」という曲。ジジ・マシンは、イタリアのアンビエント・ミュージックの奇才とも言われているアーティスト。「It’s In Hour Hands」の前半で、うっすら聞こえるシンセサイザーのリフが、「Clouds」なのだ。Nujabesの「Latittude」でもサンプリングされているので、そちらの方で知っているという方も多いかもしれない。
CHIC
LADY(HEAR ME TONIGHT) MODJO
ダフト・パンクの世界的なブレイクを受けて、2000年台初頭に一気に注目を集めたフレンチ・ハウスのアーティストたち。その中の人組が、モジョだ。残念ながら2001年にリリースしたアルバム1枚だけで活動を終えてしまったようだが、そのアルバムからのシングル「LADY」は、イントロから楽曲全体を通してのギターカッティングが印象的なハウスナンバー。このギターカッティングは、CHICの「Soup For One」をサンプリングしている。オリジナルの楽曲からピッチも変わっているので、若干の気持ち悪さもあるが、聞けば一発でわかる。ヒップホップにおけるサンプリングの元祖の元ネタもCHICだったのだが、ナイル・ロジャースのギターは、サンプリングしやすいのかもしれない。
HALL & OATES
ON HOLD THE XX
イギリスのインディー・ポップ・バンド、THE XXが2017年にリリースしたアルバム「I SEE YOU」からのシングル曲。この曲でサンプリングされているのは、ダリル・ホール&ジョン・オーツの「I CAN’T GO FOR THAT(NO CAN DO)」だ。1981年にリリースされたオリジナルは、スローテンポのソウルナンバーだが、THE XXは、この曲のボーカルをかなり切り刻んで、「ON HOLD」の間奏部分に配置している。ホール&オーツのオリジナルを知っていたとしても、なかなか気が付かないのではないだろうか。
SCATMAN JOHN
SWEET DREAMS ALAN WALKER & IMANBEK
ここ最近で一番の大ネタ使いといえば、この曲だろうか。ノルウェー出身のDJ、アラン・ウォーカーがカザフスタンのアーティスト、イマンベクとタッグを組んだ「SWEET DREAMS」では、90年代に日本でも大人気だった、スキャットマン・ジョンの「スキャットマン」をサンプリングしている。20代、もしかしたら30代でも、オリジナルを知らないという人も多いかもしれない。サンプリングの一つのメリットというのは、世代を超えたコラボが可能で、新しい曲を聞いた若い人が、サンプリングされた昔の楽曲に触れることができる、ということも言えるのだろう。