夏の音楽の楽しみといえばライヴ・コンサート!

RADIO DIRECTOR 清水葉子
フリーランス・ラジオディレクター。TOKYO FMの早朝の音楽番組「SYMPHONIA」、衛星デジタル音楽放送ミュージック・バードでクラシック音楽の番組を多数担当。「ニューディスク・ナビ」「24bitで聴くクラシック」など。趣味は料理と芸術鑑賞。最近はまっているのは筋トレ。(週1回更新予定)
暑い季節のクラシック音楽の楽しみ方はいろいろ。前回ご紹介したようなノリのよい南米の音楽、涼を感じる「水」をテーマにしたコンセプト・アルバムを聴く、というのもありだが、ずばり夏の音楽祭のライヴ・コンサートを楽しむのもいい。
ヨーロッパを中心に開催されるクラシックの音楽祭。劇場やホールのシーズンは秋から春にかけてで、それらが休みとなる夏季は避暑地などでたくさんの音楽祭が開催される。歴史のあるザルツブルク音楽祭、バイロイト音楽祭などもやはり夏に行われ、世界の一流アーティストが集結して名演を聴かせてくれる。これらの音楽祭、もちろん現地で聴くことができればこんな素晴らしい体験はないけれど、お金も時間もない!という場合はもちろん録音や映像で楽しむことができる。近年はインターネットの動画サイトでライヴの様子を配信していたり、テレビやラジオでその模様を放送することも多い。また自然豊かな野外のステージで開催される音楽祭は、ホールでかしこまって聴くのとは違った、リラックスした雰囲気が漂う。
ベルリン・フィルの野外コンサート
世界的なオーケストラ、ベルリン・フィルの『ヴァルトビューネ』はベルリン郊外の公園の野外ステージで行われるコンサート。『ヴァルトビューネ=森の劇場』という意味の通り、緑豊かな会場でのコンサートは、ピクニック気分で芝生の上でくつろぎながら楽しむ人々の様子が、ベルリン・フィルの『デジタル・コンサート・ホール』でも見ることができる。今年は前回のコラムでも登場したベネズエラ出身のカリスマ指揮者、グスターヴォ・ドゥダメルが登場し、『川』をテーマにしたプログラムを披露。そして最後は定番のパウル・リンケの『ベルリンの風』で締められる。放送契約の関係で日本では聴取できない映像もあるが、アーカイヴ音源が有料でCDと同様の音質で楽しめるのでおすすめだ。
The Berliner Philharmoniker at the Waldbühne
ウィーン・フィルのサマーナイト・コンサート
同じく伝統ある名門オーケストラ、ウィーン・フィルも『サマーナイト・コンサート』を毎年開催している。ユネスコの世界遺産にも指定された美しい庭園を持つシェーンブルン宮殿で行われ、こちらは入場無料のコンサート。10万人に上る聴衆が訪れ、世界中に中継される。2017年は早くもディスクが登場しているのでそちらもチェック。
Vienna Philharmonic Summer Night Concert 2016
どちらも通常のコンサートよりエンターテイメント性に満ちたプログラムが注目。サイモン・ラトルが指揮する「スター・ウォーズ」や、ウィーン・フィルの「ハリー・ポッター」など普段クラシック音楽を敬遠気味な人でも気分が上がるのは間違いない。クラシック音楽の夏、を楽しめるのはヨーロッパに限らない。
日本各地でもたくさんの音楽祭が
ここ日本でもたくさんの音楽祭が開催されている。札幌の『パシフィック・ミュージック・フェスティヴァル』や長野の『セイジ・オザワ松本フェスティヴァル』などが代表的だ。この他にも比較的小さい規模の音楽祭も各地で開催されているので、録音や映像でなく、直接雰囲気を味わうなら是非近くの音楽祭にイベント感覚で気軽に出かけてみたい。
パシフィック・ミュージック・フェスティヴァル
パシフィック・ミュージック・フェスティヴァル
さて、先日私は友人が出演する合唱コンサートを聴きに行った。安積黎明高等学校合唱団&安積フィメールコール東京の第3回ジョイントコンサート。安積黎明高等学校(旧安積女子高等学校)合唱団は全日本合唱コンクール全国大会で毎年のように金賞を受賞するなど屈指の実力を持つ。その卒業生で構成するのが安積フィメールコール東京だ。もともと福島は合唱が非常に盛んな土地。2011年3月の東日本大震災後からは母校と地域の復興のために、ということで東京で開催されているこのジョイントコンサート、今回は3回目だが、まず充実したプログラムが目を見張る。オープニングは高校の校歌で始まるのだが、さすがは歌の伝統ある学校だけに混声4部構成の壮大な校歌。楽曲としてのクォリティが高いのに驚いた。また高校生たちの隙のない合唱アンサンブルはさすがで、OG、OBが構成する他の2つの実力派グループ(Choral Aurora/合唱団L’arba)も今回参加していたが、それにもひけをとらない、或いはそれ以上に熱のこもった演奏だ。またピアノ伴奏の馬場田あや乃さんがよかった。彼女が弾いたとたん、音楽が急に呼吸を始めたようで、もはや伴奏という枠を超えた見事なピアノだった。
湯浅譲二の女声合唱組曲『ふるさと詠唱』も素晴らしかった。1982年安積女子高等学校70周年に委嘱されたもので、3曲からなるかなり大きな合唱曲だが、地元出身の詩人、三谷晃一の詩が震災後の福島を予感したかのような、そしてなお愛おしむように聴こえるのは不思議だ。最後は演奏会の趣旨に賛同した約30人の公募メンバーをも含む全員合唱で地元福島の歌が歌われた。日本において合唱は独特のジャンル、という印象も強いが、生身の人間の声が生み出すアンサンブル、そのエネルギーをあらためて感じたコンサートだった。それは福島で生まれ育った人々がふるさとを思う心が、歌というフィルターを通して私たち聴衆の心に触れた瞬間だった。
安積黎明高等学校合唱団&安積フィメールコール東京
それでは次回も、クラシック音楽の魅力をご紹介していきたいと思います。お楽しみに。
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