秋を満喫できていますか?読書の秋、スポーツの秋、食の秋、そしてもちろん、音楽の秋。より沢山の素敵な音楽と出会うために、このコラムを少しでもお役に立てていただけていたら幸いです^^
高樹千佳子(cent.FORCE)
MUSIC ON!の音楽番組「TVカウントダウンE.T」、NOTTVの音楽番組「LOVE&ROCK」でMCを勤め、無類の洋楽好きとしても知られる高樹千佳子。そのコアな知識と飽くなき探究心を、NO.16 Columnで好き勝手に披露してもらいます!(週1回更新予定)
今回は、聴くたびに強く心を揺さぶられる女性アーティスト、Amy Winehouseについてです。
イギリスを代表する、ソウル~R&B~ジャズシンガーソングライターで、類稀なる素晴らしい才能を持ったエイミーは、2003年に20歳でデビューし、そのわずか8年後の2011年、27歳という若さで亡くなってしまいます。過激な言動から、晩年はスキャンダラスな面ばかり取り沙汰されてしまいましたが、音楽的評価はとても高く、その生き様と共に、音楽史に残るアーティストです。リリースしたオリジナルアルバムは2枚。
モダンかつレトロな、ソウルフルでジャジーなサウンドに、20代とは思えないハスキーで貫禄ある歌声。人生の苦悩や喜びを力強く歌うエイミーの音楽は、生命力に溢れ、彼女の生き様や壮絶な体験がぎゅっとつまっていて、‘共感’とは違うけど、強く心を揺さぶられて聴き入ってしまいます。
エイミーは、母方の叔父さんの多くがプロのジャズミュージシャンだったこともあり、小さい頃からジャズに囲まれて育ったそうです。18歳でユニバーサルと契約を結び、03年の1stアルバム「Frank」を経て、06年、22歳の時に、マーク・ロンソンと生み出した「Back To Black」をリリース。世界中でロングヒットとなり、08年のグラミー賞で主要含め5部門に輝いた今作は、ネオR&Bの名盤とも言われています。私も何度聴いたかわからないぐらい。
この中の「Rehab」という曲。当時、マネージャーがエイミーにアルコール依存を断ち切るためにリハビリ施設に入ることを強く勧めたんですが、彼女は頑なに拒み続け、依存症を断ち切るための苦しい試練をこの曲で表現したそうです。‘みんな私をリハビリに行かせようとするけど、リハビリなんて真っ平ごめんだわ’と歌っているんですね。
激しくも、実は繊細でピュアで正直な人柄というのが、エイミーのドキュメンタリー映画「AMY」を観るとよく伝わってきます。「わたしはただ歌いたいだけ」 音楽を心から愛し、才能にも恵まれた彼女。有名になることを恐れ、マスコミに過度に追われ、苦しみ、次第にやせ細っていく姿は、あまりにも痛々しくて、見ていて辛かったです。身近にいる人達がもっと優しく包容力があったなら、周りの人達が温かくサポートしてあげていたなら、、こうはならなかったのかな。。本当は立ち直りたかったんだと思います。売れて有名になる前の、若かりし頃の弾けるような笑顔が、とても印象的でした。
アルコールやドラッグ漬けでスキャンダルの多い女性アーティスト、という印象しかない方は、この作品、絶対にご覧いただきたいです!これまでのイメージが180度変わるはずです。
波乱万丈で、普通の人の何倍も何十倍も密度の濃い人生を送って、駆け足であっという間にこの世を去ってしまったエイミー。歳を重ねた彼女の歌ももっと聴きたかったな、と思いつつ、遺してくれた名曲の数々を、これからも大事に聴いていきたいと思います。
(アルバム2枚まるごとお薦めですが、、個人的に特に好きな曲を挙げておきますね。)