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Column Feature Tweet Yoko Shimizu

スター・ウォーズinコンサート

YOKO SHIMIZU COLUMN


ラジオディレクター清水葉子コラム

清水葉子COLUMN
RADIO DIRECTOR 清水葉子

フリーランス・ラジオディレクター。TOKYO FMの早朝の音楽番組「SYMPHONIA」、衛星デジタル音楽放送ミュージック・バードでクラシック音楽の番組を多数担当。「ニューディスク・ナビ」「24bitで聴くクラシック」など。趣味は料理と芸術鑑賞。最近はまっているのは筋トレ。(週1回更新予定)

世間がお盆休みの中、ラジオディレクターは人もまばらになった都内で残り仕事を片付ける、というのがいつものパターンである。私は今年もそういった感じではあったものの、いざお盆に突入してみると意外にも時間に少し余裕があることに気付いた。しかしこの場合一日中スタジオに張り付いていなくても大丈夫、といったニュアンスであって、どこかに旅に出ようとするほど時間がある、といったレベルではない。どっちにしても遠出をするにはお盆の真最中に気付いても遅いというものである。そこで私が考えたのが普段なかなか観られない映画をみよう、ということだった。思えば今年の夏はいささか暑過ぎて日頃の疲れや睡眠不足で、下手に動くと熱中症になりそうだし(私は昔から暑さに弱い)、映画は絶好の娯楽なのではないか、と思い立ったのである。

実は私はラジオの仕事に関わる前は少し映画配給会社でアルバイトをしていた経験がある。と言ってもちょっと特殊な会社だったし、仕事自体は事務程度のお手伝いだったのでさほど映画に詳しくなったわけでもないのだが、それでもその頃は定刻には仕事が終わる、という生活スタイルだったので、よく仕事終わりに映画を観に行っていた。話題のロードショーも観たが、当時はまだミニシアターがいくつもあり、渋谷辺りのちょっと前衛的な作品を上映していた映画館ではアーティスティックでファッショナブルな若者をよく見かけたものである。

やや年寄りめいてそんな昔を思い出していた頃、シネマ・コンサートへのご招待を頂いた。昔の名作映画をスクリーンとオーケストラの生演奏で楽しむ、というシネマ・コンサートはヨーロッパやアメリカで流行しているらしい。もちろん映画には音楽を楽しむ、という要素がかなりあるし、名作には必ず記憶に残る音楽が使われているものである。その音楽を生のオーケストラ演奏で上映する、というイベントはここ最近日本でも東京フィルハーモニー交響楽団や、日本フィルハーモニー交響楽団など国内の名門オーケストラが演奏を担当し、人気作品を上映している。これまでに「ゴッドファーザー」や「2001年宇宙の旅」、「タイタニック」、「ウェストサイド・ストーリー」などが上映されているらしいが、なるほど音楽が印象深い作品ばかりである。

今回私が鑑賞したのは誰もが知るあの名作、映画「スター・ウォーズ/新たなる希望」のシネマ・コンサートである。「スター・ウォーズ」といえばあのジョン・ウィリアムズ作曲のお馴染みのメイン・タイトル。私は小学校の運動会でこのメイン・タイトルを初めて聴いた。当時これを使って創作ダンスをやったのだが、勇壮で劇的な、アドレナリン出まくりの高揚感漂うその音楽には子供ながらに興奮したことを覚えている。

icon-youtube-play 映画「スター・ウォーズ」メイン・タイトル

かつてハリウッドにはエーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルトという作曲家がいた。早熟の天才でオーストリアでオペラ作曲家として活動を始めたが、ユダヤ系であったことからアメリカへの亡命を余儀なくされ、その後は映画作曲家として亡命生活を送った。ジョン・ウィリアムズが彼の影響を受けているというのはその音楽を聴けば明らかで、「スター・ウォーズ」にそっくりのコルンゴルトの作品もあるのだ。

icon-youtube-play 映画「嵐の青春」オープニング

話が逸れたが今回の会場は東京国際フォーラムのホールA。5000席を超える大ホールは大盛況だった。オーケストラの生演奏を初めて聴く、というお客さんも多かったようで、その迫力に感嘆の声がちらほらと聞こえてきた。芸が細かかったのはオープニングの20世紀フォックスのテーマも生オーケストラで演奏されたこと。それに続いてあの有名なメイン・タイトル。なかなか贅沢だ。

icon-youtube-play 20世紀フォックス・オープニング

しかし「スター・ウォーズ」クラスの映画になると、アクションや効果音も多彩で、ストーリーも次々と展開して目が離せないし、何しろ動きのある映像に目を奪われて、肝心の生演奏は劇中においてはBGMとなってしまうこともしばしば。生オケのありがたみを本当に感じたのは、実はオープニングとエンディングだったかもしれない。しかし実力ある東京フィルハーモニー交響楽団の安定した演奏に加え、指揮者のニコラス・バックは時に指揮棒をライトセーバーに見立てて振ったりするなど茶目っ気たっぷりに楽しませてくれた。それに初めて生オケの音に触れたお客さんが、これ以降もオーケストラのコンサートに足を向けるきっかけになればこんなに素晴らしいことはない。

この「スター・ウォーズ」のシリーズは9月2日にも旧三部作として「帝国の逆襲」「ジェダイの復讐」がこの東京国際フォーラムホールAで大スクリーンと生演奏で鑑賞できるという。また「スター・ウォーズinコンサートJAPAN TOUR 2018」は東京以外にも、大阪、名古屋、浜松、札幌、仙台、福岡7都市14公演が開催。新たなエンターテイメントとしてシネマ・コンサートが定着しつつあるようだ。

icon-youtube-play 映画「スター・ウォーズ/新たなる希望」

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