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Column Feature Tweet Yoko Shimizu

ベルリン・フィル来日に寄せて

YOKO SHIMIZU COLUMN


ラジオディレクター清水葉子コラム

清水葉子COLUMN
RADIO DIRECTOR 清水葉子

音大卒業後、楽器店勤務を経てラジオ制作会社へ。その後フリーランス。TOKYO FMで9年間早朝のクラシック音楽番組「SYMPHONIA」を制作。衛星デジタル音楽放送ミュージックバードではディレクター兼プロデューサーとして番組の企画制作を担当。自他ともに認めるファッションフリーク(週1回更新予定)

現代の日本は世界中の一流指揮者とオーケストラが毎年のように来日する、クラシック音楽界におけるアジアでの重要な拠点である。

まず三大オーケストラといえば、伝統あるニューイヤー・コンサートで名高いウィーン・フィルハーモニー管弦楽団と、名実ともに世界のナンバーワンの座に君臨するベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、そしてオランダの名門ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団だが、この3つのオーケストラがこの秋、揃って来日。音楽ファンの話題となっている。先のコラムにも書いた若きマエストロ、ヤニック・ネゼ=セガンが率いるアメリカのフィラデルフィア管弦楽団も含め、ちょっとした来日オーケストラ・ラッシュとなっている。

世界の一流オーケストラの公演はそのチケット代もかなりの高額。S席で4万円以上するのでそれなりにお財布の覚悟が必要である。私は事前準備が足りなかったのと、自腹を切る意気込みがなく、あえなく仕事に追われる日々だったのだが、番組で特集を組んで紹介したり、もちろんその情報に触れる機会はたくさんあった。既に放送は終わってしまったのだが、担当する「山野楽器クラシック・ベスト10」では歴代ベルリン・フィル指揮者の聴き比べを特集。録音で聴く巨匠指揮者たちの圧倒的な統率力に導かれるかつてのベルリン・フィルの音は、現在のスーパー・ソリスト集団であるベルリン・フィルとはやはり違う。ウィーン・フィルも同様だが、これだけ楽団員一人一人の演奏能力が高くなってくると、もはやオーケストラ自体が自主性を持つようになる。あの帝王と呼ばれたヘルベルト・フォン・カラヤン以降、芸術監督も楽団員が自ら選ぶようになったのだ。

icon-youtube-play ヘルベルト・フォン・カラヤン

カラヤンの後に選ばれたのはイタリア人のクラウディオ・アバド。どちらかというと職人的な指揮者で、ここだけの話、就任当時、私などはあのベルリン・フィルを率いるのにはやや小粒な印象があった。しかし晩年ユース・オーケストラを設立するなど、活動は時代を先取りするもので、その後の小編成オーケストラのブームへと続く先見の明は注目すべきことだろう。2014年に80歳で世を去った。

icon-youtube-play クラウディオ・アバド

アバドの後任に芸術監督に選ばれたのはイギリス人のサイモン・ラトルである。イギリスの地方オーケストラに過ぎなかったバーミンガム市交響楽団を世界に引けを取らない水準まで引き上げたオーケストラビルダーとしての実績、幅広いレパートリーと楽曲の真髄に迫る希求心。彼の活動期間は私が音楽の仕事を始めた時期と重なっていることもあって、個人的にもちょっと特別な存在である。だから私の中ではラトルはいまだに青年指揮者、といったイメージなのだ。ベルリン・フィル退任後はロンドン交響楽団の音楽監督に就任している。

icon-youtube-play サイモン・ラトル

そのラトル退任の少し前から時期芸術監督候補について様々な憶測を呼んだが、多くの予想に反して就任が決まったのが、キリル・ペトレンコである。ロシア出身、しかし音楽教育は主にウィーンで受けており、オーストリア、ドイツといったクラシック音楽の本場で活動し、歌劇場での経験も豊富な指揮者。しかし当初日本では録音も殆どなく、来日もしていない、といった謎の存在で、多くの人が意外な感じを受けたのは言うまでもない。しかし徐々にその真価が明らかになるだろう。

icon-youtube-play キリル・ペトレンコ

今回のベルリン・フィル来日は巨匠ズービン・メータとだったが、その来日記者会見に私も赴いた。永田町にあるキャピトル東急ホテルで行われた会見はベルリン・フィルの自主レーベルである、「ベルリン・フィル・レコーディングス」から発売された8人の指揮者―小澤征爾、パーヴォ・ヤルヴィ、ヘルベルト・ブロムシュテット、ベルナルド・ハイティンク、マリス・ヤンソンス、クリスティアン・ティーレマン、ズービン・メータとのブルックナー交響曲全集のお披露目でもあった。これはハイレゾでも配信され、CDも写真集などが付いた豪華盤である。近年はメジャーレーベルがオーケストラの録音を殆ど行わないので、どこも自主レーベルを持ち、自ら発信していくことが主流となっている。ベルリン・フィルは楽団のチェリストでもある、オラフ・マニンガー氏が中心となって、独自のコンテンツ「デジタルコンサートホール」や様々な媒体との連携を図るなど、まさしく八面六臂の活躍をしている。

メータの来日公演ではやはりブルックナーの交響曲第8番がプログラムされており、これは同じ時期にウィーン・フィルが来日プログラムに組んでいることも注目で、日本でこの2つのオーケストラが奏でるブルックナーを聴き比べるという贅沢な体験をする人も少なくないのだろう。

icon-youtube-play ズービン・メータ

偶然にもロゴマークと同じイエロー&ブラックの出で立ちで記者会見場にいた私は、ベルリン・フィルのオフィシャルサイトに後ろ姿を掲載されてしまった。ちなみに後ろ姿で一緒に写っているオーディオ評論家、山之内正さん出演の「特集で聴く山之内正のハイレゾ・セレクション」でも、このブルックナー交響曲全集を新年にハイレゾで放送予定である。

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