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Dilemma

Column Feature Tweet Yoko Shimizu

バッハが聴こえるホテル

YOKO SHIMIZU COLUMN


ラジオディレクター清水葉子コラム

清水葉子COLUMN
RADIO DIRECTOR 清水葉子

音大卒業後、大手楽器店に就職。クラシック音楽ソフトのバイヤー時代にラジオにも出演。その後に制作会社を経て、現在はフリーのラジオディレクターとして番組の企画制作に携わる。番組連動コラムや大学でゲスト講師をつとめるなど幅広く活動中。

4月の最終週にはMETライブビューイングで「ナクソス島のアリアドネ」を鑑賞することにした。METライブビューイングについては、何度もこのコラムでご紹介しているので、内容についてお伝えする前に、最近の私の趣味でもあるホテル巡りについて書いてみよう。

そもそもの始まりは突然のコロナ禍。初期の頃は感染症の情報も少なかったが、それでも私のような仕事は全てリモートワークというわけにはいかず、尚且つ仕事の繁忙期が重なると、公共交通機関を利用するのが少々ストレスに感じるようになり、職場近くのホテルに宿泊したのがきっかけだった。移動時間を節約できるし、仕事で夜遅くなってしまった日も、すぐ身体を休められるので、リフレッシュできて効率的に仕事ができる。東京オリンピックがあったことで都内には昨今新しいホテルが続々オープンしていたが、入国制限でインバウンドが見込めないホテル業界は、国内の需要を呼び起こすためにビジネス利用でのキャンペーンを行っていた。通常の半額近い割安価格でプランを出しているところも多く、自宅までのタクシー代くらいで泊まれるのが魅力だった。

始めは職場の近くから始まって、出先で時間が遅めの用事があった際にも周辺のホテルを利用するようになった。専門のアプリや検索サイトを利用するとお得な情報も入ってくるので、たまに贅沢して高級ホテルに泊まることもあるのだが、この場合はちょっとした非日常の気分も味わえる。特にいいコンサートを聴いた後に家事や雑事から解放され、フカフカのベッドに滑り込むのは至福の時間である。こうしてしばしば都内のホテルステイを楽しむようになった。

METライブビューイングは映画会社の松竹がやっている関係で、歌舞伎座近くの東劇での上演がメイン。そこで映画鑑賞がてら最近オープンしたばかりのホテルグランバッハ東京銀座に宿泊してみようと思い立った。クラシック音楽関係者の間でも話題になっていたこのホテル。東京銀座の他、仙台や熱海、京都にもオープンしている。名前の通りバロックの大作曲家、ヨハン・セバスティアン・バッハをコンセプトにしただけあって、木目調のシックでクラシカルなインテリア。ロビーフロアにはグランドピアノが置かれ、サロンコンサートなども開催している。6月は人気ヴァイオリニスト、松田理奈さんが登場してビーバーやバッハの無伴奏などを演奏するとのこと。

icon-youtube-play 松田理奈

館内BGMはもちろん全てバッハ。無伴奏チェロ組曲やブランデンブルク協奏曲、ゴルトベルク変奏曲、カンタータのアリアなど演奏内容も優れた音源がセレクトされていて、しかもなかなか高音質だ。バッハ好きならば思わず耳を傾けてしまうだろう。室内のテレビのモニターには選曲リストも。職業柄アーティスト情報も知りたくなってしまった。

icon-youtube-play バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番プレリュードbyヨーヨー・マ(Vc)

ホテルに到着し、まず荷物をフロントに預けて14時半からのライブビューイングが始まる前にホテルに併設されたレストラン「Wald Haus」でランチをとった。ここはウェルネス・メニューを揃えていて、目下ダイエット中の私にはぴったり。私は比較的リーズナブルで、メインが魚料理のランチセット(1500円程)をオーダーした。全粒粉パンも美味だったが、添えられたオリーブオイルも香り高い。食事中にもバッハの音楽は耳に心地よく、決して邪魔をしないのがいい。東劇にも近いため劇場割引券も置いてあるので、前後に食事やお茶をするのにもおすすめである。

さて、ライブビューイング観賞後、ホテルにチェックイン。今回宿泊したのはスタンダードタイプの客室。ドリップコーヒーが置いてあるのが嬉しい。バルミューダのケトルは注ぎ口が細く、コーヒーを淹れるのに最適。ペットボトルのミネラルウォーターの他にバウムクーヘンが添えられていたのが、このホテルらしい心遣いだ。ルームサービスも充実していて、BACHの頭文字とラッキーナンバー14をイメージしたカクテルなどもある。

icon-youtube-play バッハ:コーヒー・カンタータBWV211より

無料のWi-FiやUSB端子が付いたデスク、ベッドサイドにはゆったりとしたソファーも設えてあり、寛ぎながらビジネス利用もきちんとできる仕様になっている。私は早速デスクで仕事。夜は近くで会食の予定があったので、その少し前にロビーフロアにあるラウンジ「マグダレーナ」で読書。これがバッハの愛妻の名前なのは音楽好きならば周知のこと。バッハの肖像画や直筆譜などが飾られた壁を眺めつつ、そんな憩いの空間でサービスのウェルカム・ドリンクと小さなスイーツをいただきながら20分程過ごす。

19時に友人と約束していた銀座一丁目の和食店「座屋」を訪れる。ここも初訪問だったが、とても丁寧なお料理で、炙った初鰹や、花山椒と鴨のローストなど、季節の旬のメニューに舌鼓を打つ。お酒好きの友人はそのままバーに流れていったが、私はホテルに戻ってまた仕事の続き。

様々なホテルを泊まり歩くうちに少々チェックが厳しくなってしまうところもあるのだが、バスルームの設備は最新で機能的、モダンなデザインもスタイリッシュで使いやすく、トイレが独立しているのもよし。タオルやリネン類も良質で、浴衣でなくパジャマが用意されていたのも個人的に好みである。翌日は収録があったので一泊でチェックアウトしたのだが、機会があれば是非連泊もしてみたい。

クラシック音楽ファンにとって新たなランドマークとなりそうなホテルグランバッハ東京銀座。歌舞伎座やMETライブビューイング鑑賞とのカップリングにいかが?

https://www.grandbach.co.jp/ginza/ icon-external-link

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