正月三が日も過ぎて、2021年が本格的に動き出した。改めて2020年を振り返ると、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、「リモート」が一気に拡大した。音楽界においても、レコーディングはもちろん、お客を集めての興行が難しい中で、ライブや色々なアワードであったりが配信という形になった。筆者も配信ライブを何本か見たが、移動の時間や手間がないのがなんとも気楽である。またチケットの争奪戦も起きないし、ギリギリ直前でポチッとして見ることもできる。さらに、基本的なライブのサイズが1時間程度に設定されていることが多く、価格帯もそこまで高くない。ある程度の期間アーカイブで見られるというのは、音楽の裾野を広げるという観点で見てもメリットの多い「選択肢」が増えたと思う。ましてや、国をまたいでの移動すら制限されている今、海外アーティストのライブを見るには、これしか手段はないだろう。
一方で、現地で見るあの熱気はやはりない。これはどうしようもないことだろう。またインターネット環境などの観点から、事前に収録したものを配信するというスタイルも多いので、「その瞬間だけを共有している」と言いう、ライブ特有の高揚感も少ないだろう。これはやはり、実際のライブに勝るものはない。
そして、メディアの立ち位置も大きく変えた年になったと思う。YouTuberの人気の高まりもあるが、アーティストが自ら発信していくためにYouTubeをはじめとする動画系SNSを使うことが、より増えた。シンプルにMVや過去のライブ映像の一部を配信するだけでなく、YouTuberさながらの配信をするアーティストもいる。出演側にとっては、テレビやラジオとの役割もかなり細分化され始めているだろう。ただでさえ財務的に弱い日本のラジオは、本当にメディアとしての立ち位置、特色というものを改めて考えるターニングポイントに立たされているように感じる。去年、FMラジオ局が2局閉局してしまったが、下手をすれば今年、さらに閉局に追い込まれるラジオ局が出てきても驚きはない。
[コラム] 2つのFMラジオ局が閉局した
https://no16.jp/news/2020/7/1/column
YouTubeに進出した人たちもしかり。YouTubeは、動画を上げ続けなければ、ファンが離れて行ってしまう。軸足をどこに置くのか、それに対してSNSをどのように使っていくのか。これは正解のない世界なだけに、手探りな状態が続くだろう。日本におけるトップYouTuberのHIKAKIN氏もまだ31歳なので、気力的にも体力的にも充実しているだろうが、TOPを維持し続けるのに並並ならぬ努力を続けているに違いない。YouTubeを使いこなすのは今後必要不可欠だろうが、「YouTuber」という肩書きを名乗るのは、一度考えるべきなのではないかと思う。
最後に新型コロナウイルスだ。年末にかけて、イギリスで広がり始めた変異株は、日本、そしてアメリカにも飛び火している。しかも、海外渡航歴がない人から見つかったりもしていることを鑑みると、現地で変異が始まっていると考えるのが妥当だろう。オリンピック・パラリンピックを控えている日本でも、大晦日に東京の新規感染確認者が初めて1000人を突破し、今週にも緊急事態宣言が再発出されようとしている。経済的なダメージはもちろん、音楽、スポーツといった、今年再起を図ろうとしているエンタメ業界にとっては痛手だ。ワクチンによって、どこまで感染が抑えられるのか、そのタイミングも含めて注目しなければならない。
去年はフジロック、SUPERSONIC共に延期という決定をした。世界中のフェス、世界中のアーティストたちが2021年に望みを託して、オーディエンスたちとの交流を先延ばしにしたのだ。果たしてその望みがどこまで実現するのか。
(NO.16編集部)