ノミネートが発表された第63回グラミー賞。
今回は、Best Dance/Electro Albumをピックアップしてみたい。
ノミネートされたのは、
*「KICK I」ARCA
*「PLANET’S MAD」BAAUER
*「ENERGY」DISCLOSURE
*「BUBBA」KAYTRANADA
*「GOOD FAITH」MADEON
以上の5作品だ。見事に5者5様のアルバムが揃ったと思う。強いていうのであれば、ディスクロージャーとケイトラナダは、少しベクトルが似ているかもしれないが。この中かから今回は3組をピックアップ。
まず、アルカはこのラインナップの中でも特に異質ではないだろうか。ベネズエラ出身のアルカは、ビョークとの仕事でも知られているアーティストで、ノンバイナリーのトランスジェンダー女性と自認しているということ。ヴィジュアルを見てもらえば分かる通り、その妖艶な出で立ちは、男性・女性という枠組みを超越してしまっているようにも感じる。これまではかなりダークなサウンドが主張していたように思うが、このアルバム「KICK I」では、ポップな一面も表層に出てきている。アルカ自身の精神面によるところかもしれないが。
ケイトラナダのアルバム「BUBBA」は、ディスクロージャーと同じく、ハウスへの回帰を計ったようなサウンドだ。そこにさらにジャズやヒップホップのテイストも混ざっている。しかし、以前のハウスと大きな違うポイントは、トラックごとの長さがとても短いのだ。ダンスナンバーというと、長い曲(これはフロアで踊ることを考えてのことだ)というのが一般的だと思うのだが、このアルバムではほとんどが2分台、3分台で構成されている。サブスクリプションの音楽ストリーミングサービスの普及で、楽曲の長さというのは、全体的に短くなる傾向が強くなったが、まさにそれを反映させたアルバムということかもしれない。なお、アルバム「BUBBA」から「10%」がBest Dance Recordingに、ケイトラナダは主要4部門の一つ、Best New Artistにもノミネートされている。
そして、フランスのDJ、マデオンのアルバム「Good Fatih」だ。18歳のとき、ソニックマニアで初来日を果たし、21歳で1stアルバムをリリース。若手DJの注目株として名前を知られたマデオンの2枚目のアルバムは、1枚目よりも音に柔らかさが増し、彼の「感情」が楽曲により反映されるようになったように感じられる。その転換点ともなったのでは、と思うのは、同世代のアーティストであるポーター・ロビンソンと共作した「Shelter」ではないだろうか?楽曲とともに、アニメーションでショートフィルムを作った「Shelter」は、楽曲をより具体的な世界観へと昇華させることができた。その体験もあり、彼の中の思いをサウンドに反映することが、素直にできるようになったのではないだろうか。全て憶測なのだが、なんにせよ、1枚目のアルバムよりもこの「Good Faith」は、何度通して聴いても飽きない、そんなアルバムだと思う。
ちなみに、収録されている「Miracle」のMVには、世界を席巻したドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」のアリア・スターク役、メイジー・ウイリアムズが出演している。
果たして栄冠が誰の手に。
(NO.16編集部)