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Column Feature Tweet Yoko Shimizu

ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2024

YOKO SHIMIZU COLUMN


ラジオディレクター清水葉子コラム

清水葉子COLUMN
RADIO DIRECTOR 清水葉子

音大卒業後、大手楽器店に就職。その後制作会社を経て、フリーのラジオディレクターとして主にクラシック音楽系の番組企画制作に携わるほか、番組連動コラムや大学でゲスト講師をつとめるなど多方面に活躍。2022年株式会社ラトル(ホームページ)を立ち上げ、様々なプロジェクトを始動中。

ゴールデンウィークの東京の過ごし方といえば、今年もラ・フォル・ジュルネ・TOKYO(LFJ)で決まりである。何やら冒頭CM口調だが、有楽町にある東京国際フォーラムを中心に行われる音楽祭はコロナ禍で中止を余儀なくされた年もあったが、本格的に通常開催に戻った昨年はもちろん、それ以前からラジオで特集番組を制作したりする機会もあり、コンサートを聴きに行くのは私にとって毎年恒例となっている。

このLFJ、もともとはフランスの古い都市、ナントが発祥である。1995年に誕生したこの音楽祭は従来の音楽祭とは一線を画した内容で大評判となった。企画したのはフランス人音楽プロデューサーのルネ・マルタン氏。本国フランスでは今年30周年を迎え、2005年からは東京でも開催が始まり、今ではすっかりゴールーデンウィークの風物詩となった。現在は世界中に広がりをみせている。

icon-youtube-play LFJ2024

東京の音楽祭といえば桜の季節には東京・春・音楽祭もある。今年はこのポッドキャスト番組を担当したこともあって、私は上野の音楽祭にも連日のように通った。こちらは文化発祥の地、上野という土地柄もあり、クラシック音楽専門のホールである東京文化会館をはじめ、博物館や美術館、藝大の奏楽堂などでコンサートが行われる。歴史的な建築物の中でのコンサートはふらっと立ち寄った人も楽しめるが、熱心な音楽ファンのためのラインナップが特徴だ。対してLFJはもっとライトな、普段はクラシック音楽に馴染みのない人でも気軽に聴きに行けるような雰囲気がある。通常は1公演あたり2時間近いコンサートを短めの45分にすることで、気負いなくコンサートを楽しむことができるし、有楽町・丸の内エリアでは合間を縫って食事やお茶、買い物を楽しむこともできる。各種展示やレクチャーなどもあり、もちろん音楽好きならば、いくつもハシゴして、その組み合わせをパズルのように楽しむのもまた一興である。

・・・とは言っても、人気の音楽祭である。しかもゴールデンウィークという大型連休。インバウンドで有楽町界隈は普段から観光客で賑わっている。まずはチケット争奪戦から。90公演の中から聴きたい公演をピックアップして、タイムテーブルと睨めっこする。次に時間をうまく調整してスケジュールを立てるのだが、チケットは一般発売ではお目当ての公演は売り切れてしまうことが多い。今年は抽選発売の時点で忘れずに申し込むことができたので、ほぼ希望の公演を押さえることができたが、5/3に公演が集中するという状態に。まぁ、それは仕方ない。友人のK女史とチケットを分配していると、ふと1公演多いことに気付く。なんと公演番号を勘違いしてコンサートのチケットを購入していたのである。この公演番号がクセもので、毎回老眼世代の間違いのもととなる。トホホ。

間違ったとはいえ、大き過ぎるホールAの音響が苦手なだけで、せっかく購入したのだからと気を取り直して初日の午後、有楽町に向かう。勘違いして取ったわりにはホールの特性を考えてかなり前方の席を確保していた私。無意識って怖い。

さてその辻彩奈のヴァイオリンとクリスティアン・アルミンク指揮兵庫芸術センター管弦楽団によるコンサート。メンデルゾーンのヴァイオリン協奏曲をメインとしたプログラム。うーむ、前方の客席にも関わらず、どうにも舞台の音が遠い。しかし演奏が始まった途端、柔らかくも品のある音色に俄然惹き込まれてしまった。広島交響楽団の音楽監督でもあるアルミンクの指揮には定評がある。音響のせいかオケはやや線が細めに感じたが「ジークフリート牧歌」の美しい旋律を生かして、そのしなやかさを増した音楽はとても美しい。そしてメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲では辻の情熱的な歌い口にうっとり。それがかえってオケと好バランスで見事なメリハリをつけている。辻の実力は折り紙付きだが、このメンコンのようなザ・定番曲で、より一層発揮される。完璧なテクニックでカデンツァも決して大仰にならず、でも熱量は十分。その頃にはホールの響きのことなど気にならなくなって演奏に聴き入ってしまった。勘違いがあったとはいえ、初っ端からいい演奏を聴けて大満足。

Photo by Makoto Nakagawa
Photo by Makoto Nakagawa

この後グルテンフリーな食生活を貫いているK女史に付き合って、地下のベトナム料理のお店でヘルシーにお腹を満たす。次のホールCはお店のすぐ上なので移動も便利。サックスのエリプソス四重奏団はアメリカ音楽の楽しいプログラム。ワックスマンの「アルテミスへの夢」など、演劇的な珍しい凝った作品も含まれていた。

Photo by Makoto Nakagawa
Photo by Makoto Nakagawa

LFJの今年のテーマは「オリジン」。原点に戻ろうといった趣旨だが、続いて同じホールCではまさに世界を構成する四大元素の「地火水風」といったキーワードで楽曲を構成したアカペラ・トリオ「レ・イティネラント」とティエリー・ゴマールのパーカッション。伝統的な民謡では時に3人のヴォーカルが変わるがわる客席に移動して歌い、こだまのような神秘的な響きが耳に心地良い。ドビュッシーやプーランクの編曲もあり、もとは器楽曲のこれらがどんな歌詞で歌われていたのか気になる。イマジネーション豊かな彼らの演奏は特にLFJらしい自由で色彩豊かな音楽世界を感じさせた。

Photo by Shun Itaba
Photo by Shun Itaba

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