FUJI ROCK FESTIVALが苗場で開催されるようになってから今年で20周年。その最終日となった2018年7月29日(日)、ロックの神様ボブ・ディランが遂にフジロックに登場。ノーベル文学賞受賞後初、日本においては初来日から40周年、日本通算101回目の公演となるもので、初の日本のロック・フェスへの参戦となった(2016年の来日以来2年ぶり。野外ステージとしては1994年東大寺で行われたAONIYOSHI以来24年ぶり)。その各曲ごとの詳細ライヴレポートが到着した。
(情報提供:SONY MUSIC JAPAN INTERNATIONAL)
ボブ・ディランの出演時間には他の会場では一切ライヴが行われないという異例の状況の中、夕暮れ迫るグリーンステージに定刻の18時50分よりやや早くボブ・ディランはステージに登場。オープニングはアカデミー賞歌曲賞受賞「シングス・ハヴ・チェンジド」。時折強い風が吹く中、ディランは髪をなびかせながらピアノ演奏とともに力強い歌声を聞かせてくれた。前回2016年の来日公演時はアメリカン・ソングブック的スタンダード・カバー曲中心のセットリストだったが、それらは今回は1曲も演奏されず、1960年代の曲を6曲、1970年代を2曲、1990年代3曲、2000年代3曲、2010年代2曲と各ディケイド・年代ごとにバランスよく選曲。前回の来日公演では60年代の曲は2曲だけだったが、「悲しきベイブ」「追憶のハイウェイ61」「くよくよするなよ」「廃墟の街」などの前回の来日公演で演奏されなかった60年代の名曲が名を連ね、近年ほとんど演奏されなかった70年代の超レア曲「マスターピース」(ザ・バンド『カフーツ』収録。ディラン自身は1971年『グレイテスト・ヒッツ第二集』に収録)も披露。今年のツアーでは毎回「やせっぽちのバラッド」がラスト・ソングだったが、フジロックではそれを入れ替え、名曲「風に吹かれて」で締めくくる、フェスを意識したロック色の強いセットリストになっていた。
直前の韓国ソウル公演でギターを久々に弾いたことが話題となっていたが、フジロックではギター弾かなかったものの、前回の来日で見せたようなステージのセンターに立ちソロ・ヴォーカルをとることが一度もなく、全曲ピアノで演奏。。更には、昨年から今年のツアーではほとんど見られなかったハーモニカ演奏も「メイク・ユー・フィール・ラヴ」「やせっぽちのバラッド」「風に吹かれて」の3曲で披露。ライヴの間は一言も発せず、「風に吹かれて」が終わると睨むように会場中を見回し、満足気な表情をみせながらボブ・ディランはフジロックのステージを後にした。
アレンジや歌い方を変えて進化する曲の数々、フジロックでもいつものように「現在進行形ボブ・ディラン」の姿を見せつけてくれたが、近年海外ではほぼ許されていない「スクリーン映像」が奇跡的に許諾され、ほぼ定点でディランのみを映し続けてくれたそのおかげで、歌う表情、立ち姿、そして、時折見せる「笑顔」や「さりがないお辞儀」をしっかりと見とどけることができたのも非常に貴重な瞬間だった。
● 各曲ごとのライブレポートは以下の通り
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1 シングス・ハヴ・チェンジド
ディランはピアノ。いつものオープニング曲を軽く歌い始め淡々と歌詞をなぞるように歌う。途中でピアノソロが入るが跳ねるような演奏だ。
2 悲しきベイブ
ディランはピアノ。歌い出しが聞こえにくかったが、久々の演奏だからだろうか。しかし後半にかけて盛上りをみせる。
3 追憶のハイウェイ61
ディランはピアノ。奔放に歌い始まりロックな歌い振りで演奏もまとまってくる。後半のピアノ演奏は鍵盤をヒットしているかのようだ。ノリが良い。
4 運命のひとひねり
歌詞の一語一語を大切にかみしめるように歌っているせいか、囁いているようにも聞こえた。ディランはピアノで、奇妙なメロディを奏でる。会場が暗くなってきて、照明が映えるようになってきた。
5 デューケイン・ホイッスル
ジャムの様な演奏で始まり歌詞を投げ捨てる様に歌うが、それによりグルーブが生まれバンドの演奏も高まりをみせる。この歌がここで披露されるのは構成の妙だ。
6 マスターピース
久々のライヴでの演奏になる。ノーベル賞を授賞をしたからこその選曲なのかというこちらの勝手な思い込みを余所に淡々と歌い進んでいく。強風がディランの髪をあおる。スティールギターとディランのピアノ演奏が絡み合いながら、いつしか日が暮れてきた。
7 オネスト・ウイズ・ミー
切れ味よく歌い進む。ディランはピアノで、テンポ良い演奏がバンドを引っ張ってゆくようだ。
8 トライン・トゥ・ゲット・トゥ・ヘヴン
穏やかな感じで曲に入りながら確固たる歌い振り。ディランはピアノ。
9 くよくよするなよ
音合わせえの後のドラムの演奏をきっかけに、ささやく様に歌い始める。サビを歌うと歓声が湧く。カントリータッチの軽快な演奏にディランの積極的なピアノソロが絡む。
10 サンダー・オン・ザ・マウンテン
曲が始まるがアレンジが大幅に変わっているため何の曲が解らなかった。テンポ良く展開しディランのピアノが曲を引っ張りギターが絡んでゆく。演奏の後半で立ちあがったディラン、出来に満足したようだ。
11 メイク・ユー・フィール・マイ・ラヴ
ディランはピアノで、一言一言をかみしめるように歌う。ディランのハーモニカで終える。
12 アーリー・ローマン・キングズ
重たいビートが印象的なこの歌でディランはピアノ。ドラマチックに盛り上げる。
13 廃墟の街
お馴染の歌だけに一部の観客から歓声も。強弱をつけて表現豊かに歌う。素晴らしいマンドリンの演奏に呼応するかのように立ち上がってのピアノ演奏が印象に残る。
14 ラヴ・シック
この歌が、囁きせまる様に歌いまろやかな印象になったのは意外だ。ディランはピアノ。
15 やせっぽちのバラッド
音を探るように曲が始まり淡々と言葉をかみしめるように歌は展開する。ディランはピアノとハーモニカ、両手を広げるポーズがあった。
16 風に吹かれて
ヴァイオリンとピアノの演奏が絡み合うようにして曲が始まる。歌い始めと共に大歓声で、この日のハイライトとなった。のびのびと歌う様は気持ちよさそうで、観ている方も開放的に。
最後はバンドメンバーとボブ・ディランが揃ってステージに。見得を切るように客席全体を見回しステージを去ってゆく。こうして待望したディランのフェスは90分丁度のステージで終える。いつしか辺りは闇に包まれ、熱気だけがくすぶるように残っている。
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また、この日のセットリストに基づく、楽曲のプレイリストが公開された。今後伝説として語り継がれるであろう、ボブ・ディランのフジロックで演奏された曲はなんなのか?ライヴに参加した人も、参加できなかった人もプレイリストでオリジナル曲を追体験してみるのはいかがだろう?
https://SonyMusicJapan.lnk.to/BobDylanFFRSetlist
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また、NO.16でもフジロックのプレイリストを公開している。