カナダの団体「Over The Bridge」が人工知能を使って、27歳という若さでこの世を去ったアーティストたちの「新曲」のコンピレーションを制作したそうだ。その中でも、カート・コバーンの「新曲」と呼ばれている楽曲がこちらだ。
この世にいないアーティストの新曲??よく亡くなったアーティストの「未発表曲」を「新曲」としてリリースすることはあるが、今回の団体は、AIを使って歌詞を作ったそうなのだ。さらに楽曲もコンピューターが作っているということ。(流石にヴォーカルは人間ということだが・・・)
こういった人工知能による楽曲を「新曲」と呼称するのは、かなりの抵抗感を抱いてしまう。
以前も、人工知能によるニルヴァーナ風の楽曲が制作された、という話題をお届けしたが、あくまで「ニルヴァーナ風」なのだ。なぜなら、カート・コバーンはすでにこの世にいないから、彼が作った新しいものではない。AIがこれまでのニルヴァーナやカート・コバーンを「学習」して、それっぽいものを作っているに過ぎない。誰かに寄せるのではなく、その人工知能が、「人工知能作詞作曲」として売り出すのであれば、何も言われないだろう。
若くしてこの世を去ったアーティストが「もし生きていたら・・・」「もっと曲を聞きたかった・・・」という願望は、もちろん理解できるが、それは無理な話なのである。それっぽく作っても、本人の意思や感情がそこに無ければ、意味がない。攻殻機動隊風にいえば、そこにゴーストが存在しない楽曲であり、空虚なものになってしまう。
ちなみに、このカナダの団体は、エイミー・ワインハウスやジミ・ヘンドリクス、ザ・ドアーズといった、いわゆるClub 27の面々の「新曲」を公開しているそうだ。確かにクオリティは高いが・・・
テクノロジーの発展は、今後私たちの想像の何歩先も向こうに進んでいくだろう。AI作詞作曲のとんでもなく素晴らしい楽曲も生まれてくるかもしれない。それでも、人間が感じ、心の中から溢れ出る叫びは、コンピュータを凌駕するものだと信じたい。
4月5日は、カート・コバーンがライフルで自ら命を絶った日。その苦悩、悲しみ、怒りは彼にしか理解できないものだろう。
(NO.16編集部)