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Column Feature Tweet Yoko Shimizu

秋のコンサート事始め

YOKO SHIMIZU COLUMN


ラジオディレクター清水葉子コラム

清水葉子COLUMN
RADIO DIRECTOR 清水葉子

音大卒業後、楽器店勤務を経てラジオ制作会社へ。その後フリーランス。TOKYO FMで9年間早朝のクラシック音楽番組「SYMPHONIA」を制作。衛星デジタル音楽放送ミュージックバードではディレクター兼プロデューサーとして番組の企画制作を担当。自他ともに認めるファッションフリーク(週1回更新予定)

秋はコンサートが目白押しである。特に土日は様々なコンサートが重なって、行きたくでも行けないコンサートが出てきてしまったりする。音楽関係者の中にはギリギリの移動時間でハシゴする人も多いらしいが、あまり詰め込み過ぎると落ち着いて聴けなくなるので、私の感覚ではハシゴはせいぜい2つまで、というのが妥当なところのような気がしている。

先日の日曜日、いろいろと予定が重なってしまって断念したのがトッパンホールでのベルリン古楽アカデミーのコンサート。旧東ドイツのバロックアンサンブルで、1982年から長く活動している。フランスのハルモニアムンディというレーベルからたくさんディスクもリリースしているので、私も好きでよく聴いていた。独特の滋味深い音と素朴な雰囲気がいかにもヨーロッパ、といった感じで、午前中のバロック音楽を中心とした番組ではしっとりと落ち着いて聴けるので音源を使うことも多かった。

icon-youtube-play G.F. Händel: Water Music – Akademie für alte Musik Berlin

残念だったのだが、同じトッパンホールでは10月からハーゲン・クァルテットの3日間に渡る連続コンサートが行われていた。これはトッパンホールの19周年バースデー企画という力の入ったシリーズで、ハイドンとバルトークの作品を集中して聴けるプログラムだった。ハーゲン・クァルテットも私には記憶に残る出会いがあった。まだラジオの仕事も始めてなかった頃、若くてコンサートにもそんなに行けなかった時、一音楽ファンとして新聞のコンサートご招待の懸賞に応募して当選したのがハーゲン・クァルテットのコンサートだったのである。その時は確か若きピアニスト、ティル・フェルナーとのクィンテットも含まれていた。ちょっと思い出せないのだがベルクとか現代もののプログラムもあり、そのシャープなアンサンブルに驚いたものである。20年近く経て聴いたハーゲン・クァルテットの音は少し丸くなったように感じた。しかし低音の2人は盤石な感じでしっかりと支え、ヴァイオリンはわりと自由な感じで弾くので、ハイドンなどでは時にその分離した感じがなくもなかったが、最終日のコンサートは特に素晴らしかった。温かい空気感は兄弟アンサンブルという血の繋がりもあるのだろうか。

icon-youtube-play Mozart – String Quartet No.14 in G major K.387 “Spring” (Hagen Quartet)

話が戻るが、ベルリン古楽アカデミーを断念した日曜日は午後から新国立劇場でチャイコフスキーの「エフゲニー・オネーギン」のゲネプロを見学することになっていた。月末だったので私は例のごとく慌ただしく、午前中から予定が入っていた。まずスタジオで一仕事を片付けてから四ツ谷での予定に向かうはずだったのだが、盛大に寝過ごしてしまい、直接四ツ谷へ向かう。そこでの予定は1時間〜1時間半。1時間で終われば12時40分のバスで半蔵門に行けると思ったのだが、終了時間が12時45分と微妙に遅く、結局地下鉄を乗り継いで半蔵門へ到着。この乗り換えロスタイムが意外と響いてしまった。片付けるはずの一仕事は結局終わらず、ゲネプロへ。第1幕と第2幕の頭までで休憩となったのでここで退出。「オネーギン」については少し前回のコラムで触れたので、ここでのコメントは省く。続いて「ブルガリアン・ヴォイス」のコンサートへ。

これはすみだトリフォニーホールだった。同じ半蔵門線なのでまたしても半蔵門に立ち寄り、終わらなかった仕事を滞在時間30分の間に片付ける。再び地下鉄で錦糸町駅へ降りたのだがいつもと違う出口に出てしまい、慌てたが(方向音痴)、なんとか開演前に辿り着いた。色とりどりの民族衣装に身を包んだ女性たちが舞台に現れただけで一気に東欧の世界が広がった気がした。アカペラで歌われる「ブルガリアン・ヴォイス」は純クラシックの合唱とは少し趣が違う。発声も少し地声を使った平たい響きを出す。ホーミーにも似た独特の周波数のバイブレーションを感じる。それが東洋的にも聴こえる旋律に絶妙にマッチして異空間にさらわれる。後半は邦楽器の笙とのコラボレーション。最近はジャンルを超えてのコラボも多いこの女性合唱団〈ブルガリアン・ヴォイス・アンジェリーテ〉。笙の演奏家も同様だが、この「ブルガリアン・ヴォイス」と笙の響きはどこか似ている。日本での公演だからとりあえず邦楽器とコラボしてみましょう、といった思いつきだけではないようだ。今回のコンサートではとてもよく響きが溶け合っていた。

icon-youtube-play Bobby McFerrin & The Bulgarian Voices Angelite: Tapan Bie

休憩時にはロビーに合唱の女性たちが身に纏っていた東欧の衣装や雑貨などが展示されていた。地域によって微妙に色合いやデザインが違っているのも面白かった。ギリシアやトルコとも隣接しているブルガリアだけにロマ的な、東洋風な雰囲気が音楽にも衣装にも感じられる。意外と「東欧」と一括りにしてしまってブルガリアという国のことを何も知らないのに気付く。何しろ私たち日本人にとってブルガリアといえばすぐ「ヨーグルト」という発想になってしまうのだから広告の刷り込みの力は恐ろしい。

「ブルガリアン・ヴォイス」の響きは錦糸町というちょっと混沌とした街の雰囲気にもよく合っていた。

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